研究課題/領域番号 |
18H03851
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
上田 宏 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (60232758)
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研究分担者 |
大室 有紀 (松山有紀) 東京工業大学, 資源化学研究所, JSPS特別研究員 (30571088) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | バイオセンサー / 抗体工学 / ペプチド工学 / ケミカルバイオロジー / 蛍光 / 免疫測定 / タンパク質工学 |
研究実績の概要 |
1. 抗体断片酵母提示系の構築 前年度に成功した単量体ストレプトアビジンの提示結果をもとに,抗体断片の細胞壁提示と細胞表層での蛍光免疫センサーQ-bodyの機能的提示を試みた。このため,MTX認識ナノ抗体VHHあるいはオステオカルシン認識一本鎖抗体scFvのN末端側に,コイルドコイル形成ペプチドであるE4タグとAga2タンパク質を融合した形の発現ベクターを構築し,これをAga1タンパク質を過剰発現する酵母に形質転換し,培養後発現誘導を行った。それらの酵母にE4タグと特異的かつ強く結合するK4ペプチドを二色(N末側にフルオレセイン,C末側にTAMRA)で標識したものを外部から与えてフローサイトメトリーで各細胞の蛍光分析を行った。この結果,488 nmレーザーでフルオレセインが励起され,そのエネルギーがTAMRAに移動することでTAMRAの蛍光強度が測定可能となった。さらに抗原依存的なTAMRAの蛍光強度変化が確認され,細胞上でQ-bodyの性能評価と分取が行える事が判明した。 2. 抗体ライブラリの選択 琉球大学村上博士より分与を受けた30種余りの血清アルブミン結合VHHを材料に,これらを酵母細胞表面で提示し,抗原結合能の評価とともに,TAMRA標識コイルドコイル形成ペプチドを付加してQ-body化し,抗原応答の高いQ-bodyの選択を試みた。この結果,蛍光標識した抗原を用いた抗原結合能の評価と,TAMRA蛍光の抗原依存性の評価を行うことに成功した。 3. コイルドコイル形成ペプチドを利用した高性能Q-bodyの構築 コイルドコイル形成ペプチドと蛍光色素修飾用残基からなる各種ペプチド配列を,今年度入手できたペプチド合成機を用いて合成する環境を整備した。その後,それぞれを結合させるリンカー長,配列,色素導入部位を変化させ,高い蛍光応答を示す配列をスクリーニングした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年6月、抗体たんぱく質の発現、精製、性格付けのための実験に使用する細胞破砕装置に不測の故障が生じ、業者に修理の依頼をした所、7月上旬、当装置の長期間にわたる修理・調整が必要なことが判明した。研究遂行上、抗体 たんぱく質の発現、精製、性格付けのための実験を行うに は細胞破砕装置が不可欠であったため,組み換えタンパク質を用いる実験に約3ヶ月の遅れが生じた。他方,東京都医学総合研究所より中古のペプチド合成機が入手できたため,ペプチド合成を伴う実験については予想よりスムーズに進める事ができた。以上より,全体的な進捗状況としてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究分担者である大室助教の転任,さらに新型コロナウィルス感染防止のためのラボ閉鎖等の影響も懸念されるが,状況が許す限り計画通りに研究を進めたい。
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