研究課題/領域番号 |
18H03853
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大村 直人 神戸大学, 工学研究科, 教授 (50223954)
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研究分担者 |
増田 勇人 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (90781815)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 渦動力学 / プロセス強化 / 機能構造 / 設計論 / 操作論 |
研究実績の概要 |
本研究では、「渦の動力学」を固体集積、混合・反応促進、粒子分級、物質輸送といった渦の持つ機能構造に着目し、化学工学的に体系化することを目的として、以下の4つの課題に取り組んでいる。 1)渦流動場の粒子集積過程の解明と放出制御能の探査では、2円柱非定常交互回転流動場から生じる2次元カオス混合場について、円柱の回転速度と回転持続時間を変化させて、実験と数値流体力学を用いて、カオス混合場内での粒子の分散、集積、凝集挙動を調べた。その結果、カオス混合が粒子の凝集を促進し、円柱回転の非定常性が強いほど微粒子凝集が促進され粒子径が大きくなることがわかった。 2)渦内の混合・反応特性の調査では、液滴振動装置を用いて、振動周波数と振幅を変化させ、液滴内の循環流動パターンと混合過程を調べた。液滴表面の循環流動パターンは振動板の振動周波数に依存することがわかった。さらに、液滴内の混合測定では、混合が完了するまでに必要な振動回数(無次元混合時間)は、振動周波数よりも振幅に大きく依存することがわかった。 3)円錐型テイラー渦流を利用した粒子分級では、晶析反応プロセス等への展開のための予備的研究として、円柱型のテイラー渦流において、懸濁粒子を含んだ非ニュートン流体を想定して伝熱特性に関する調査を行った。その結果、非ニュートン性が強いほど、テイラー渦セルの軸方向波長が大きくなり、速度境界層と温度境界層の厚さも大きくなることを見出した。 4)渦の移動による剥離および、物質輸送能の調査では、シミュレーションを用いて、平行平板流の一部を上下往復振動することで剥離渦を生じさせると、渦は往復振動する平板上に沿って流れ方向を移動する現象を確認した。また、振動流とバッフルを組み合わせて発生させる渦流動を利用した分離膜モジュールの耐ファウリング性能を調べて、渦流動がファウリングを効果的に抑制することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題1)においては、2次元カオス混合場における微粒子の運動挙動について概ね計画どおり実験を行い、次年度の3次元流れのカオス混合場への展開に向けて有用な知見が得られた。研究成果については、現在論文投稿の準備中である。さらにこの課題においては、国際共同研究へと発展している。 課題2)においては、さらに多くの振動板の振動条件で検討する必要があるが、実験のみならず、粒子法を用いた数値流動解析も可能となり、実験と数値解析両面での解析により、詳細な検討が可能となった。さらに、この課題においても液滴のLeidenfrost現象と組み合わせた国際共同研究へと発展している。 課題3)においては、円錐形のテイラー渦流による研究は、装置整備に時間がかかり、まだ十分なデータは得られていないが、円柱型のテイラー渦流において、懸濁粒子を含んだ非ニュートン流体を想定した伝熱特性に関する調査を行った予備的研究の成果が、International Journal of Heat and Mass transferに掲載された。 課題4)についても、数値解析を中心として、当初の計画どおり進んでおり、この研究成果をもとに、企業との共同研究を開始した。 以上各課題とも順調に研究成果が上がっており、本研究課題全体として「おおむね順調に進展している。」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
1)渦流動場の粒子集積過程の解明と放出制御能の探査については、昨年度の2次元渦流動場から得られた知見を基に、流れ場をより実際のプロセスに近い3次元流動場に拡張して、実験および、数値流体力学により、粒子発散能を定量的に評価する。実験では、粒子濃度が高い条件でも流速測定および、粒子集積状況を調査するため、超音波流速分布計により、計測を行う。 2)渦内の混合・反応特性の調査については、引き続き、液滴振動装置を用いて、振動の周期と振幅を変化させ実験を行うが、今年度は、国際共同研究先との連携のため、振動板表面に微細な溝を加工し、液滴の移動方向を制御することで、二つの液滴を衝突させ合一させることにもチャレンジする。液滴合一後の液滴内の循環流動パターンと混合パターンを、マイクロスコープを用いて調べ、振動板表面の溝形状、振動の周期や振幅を変化させることで、二つの液滴を衝突させた後の液滴内の混合特性を詳細に調べる。 3)円錐型テイラー渦流を利用した粒子分級については、前年度整備した円錐型テイラー渦流装置を用いて、テイラー渦セルが自発的に上昇する流動モードにおいて、流動・固体分散機構を、引き続き詳細に調べ、さらに晶析反応など造粒プロセスに適用し、粒子の造粒・分級の制御性について検証する。 4)渦の移動による剥離および、物質輸送能の調査については、今年度は数値シミュレーションを用いて、平板の形状を変化させて、発生する渦の大きさや移動速度を詳細に調べるとともに、振動流バッフル付き管型反応器を用いた晶析実験を行うことで、渦流動による反応性能の向上について検証する。
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