研究課題/領域番号 |
18H03854
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松山 秀人 神戸大学, 先端膜工学研究センター, 教授 (50181798)
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研究分担者 |
彌田 智一 同志社大学, ハリス理化学研究所, 教授 (90168534)
松方 正彦 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00219411)
小野 努 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (30304752)
吉岡 朋久 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 教授 (50284162)
中川 敬三 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 准教授 (60423555)
神尾 英治 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (30382237)
佐伯 大輔 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (70633832)
高橋 智輝 日本大学, 生産工学部, 助教 (80535518)
稲田 飛鳥 神戸大学, 工学研究科, 学術研究員 (10803835)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 正浸透膜(FO膜) / 水チャネル膜 / 駆動溶液(DS) / LCST相転移 / 水処理プロセス / 海水淡水化 |
研究実績の概要 |
1. 新規水チャネル型FO膜の創製 1-1.環状ペプチド分子集合体チャネル膜の創製(松山、吉岡、佐伯):環状ペプチド分子集合体を導入した平面脂質二分子膜について、FO膜としての性能を確認するとともに、環状ペプチド内の官能基が水分子の拡散性や透過性に影響を及ぼすことを明らかにした。1-2.高分子液晶垂直配向チャネル膜の創製(彌田、稲田):液晶性ブロックコポリマー(BCP)をFO膜として使うための複合膜化を検討した。新規購入の超音波ホモジナイザーで乳化したアルギン酸ナトリウム層(犠牲層)をガラス基板上に作製し、その上にBCP薄膜を製膜し、水中でBCP薄膜を犠牲層から剥離させ支持膜に重ねることで複合膜を作製する手法を開発した。1-3.革新的ロバスト無機ゼオライトFO膜の創製(松方):ZSM-5膜を用いて、無機FO膜の正浸透膜特性を説明する透過モデルの検討を進めた。また、高い透過性と塩阻止率を両立する無機FO膜の設計指針を得る検討を継続した。1-4.計算機科学による高機能FO膜開発支援 (吉岡):MD計算によりチャネル内表面特性が水および塩の拡散性に及ぼす影響を評価した。親水的なチャネル入り口が高透水性に寄与するが、疎水化されたチャネル内では塩の拡散性が大きくなることが明らかとなった。 2. 新規刺激応答性駆動溶液(DS)の創製(小野、高橋) 熱応答性イオン液体の温度依存的浸透圧発現機構の解析を基に、相図、粘度、浸透圧、相分離性をより最適化したイオン液体DSを設計した。また、イオン液体を利用した膜の調製と膜骨格にイオン液体構造を導入する技術についても開発した。 3.FO膜透過とDS再生を含む連続システムによるFS評価とFO膜システムの実証(松山、神尾、中川) FO膜分離、DS連続再生、RO膜によるDS回収を一体化した小型連続FOシステムを構築し、海水淡水化を想定した連続運転条件検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 新規水チャネル型FO膜の創製 1-1.環状ペプチド分子集合体チャネル膜の創製:環状ペプチド分子集合体を水チャネルとし、平面脂質二分子膜をその担体とする新規水チャネル型FO膜の製膜方法を確立できた。1-2.高分子液晶垂直配向チャネル膜の創製:液晶性ブロックコポリマー(BCP)薄膜を支持膜に重ねることで製膜した複合膜について、透水試験においてシリンダー内部のポリエチレンオキシド(PEO)構造が透過抵抗になることを確認した。1-3.革新的ロバスト無機ゼオライトFO膜の創製:ZSM-5膜を用いた検討で、これまでに、既存の有機高分子FO膜の透過モデルと一部異なる部分があることが明らかになった。高い透過性と塩阻止率を両立する無機FO膜の設計指針を得るため、検討を継続している。1-4.計算機科学による高機能FO膜開発支援:MD計算によりチャネル内水透過性および塩阻止性のシミュレーションモデルを構築した。環状ペプチドの場合、親水的なチャネル入り口が高透水性に寄与し、疎水化されたチャネル内部が塩の拡散性に寄与することを明らかにできた。 2. 新規刺激応答性駆動溶液(DS)の創製 熱応答性イオン液体の相図、粘度、浸透圧、相分離性をより最適化したイオン液体DSを設計・合成し、性能評価を行うとともに、イオン液体を利用した膜の調製と膜骨格にイオン液体構造を導入する技術についても検討を行えた。 3.FO膜透過とDS再生を含む連続システムによるFS評価とFO膜システムの実証 構築した小型連続FOシステムを用いて、FO膜とイオン液体DSの性能評価を行うとともに、海水淡水化を想定した連続運転条件の検討を実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
1.新規水チャネル型FO膜の創製 1-1.環状ペプチド分子集合体チャネル膜の創製:水チャネルを導入した平面脂質二分子膜の形成方法について、脂質組成や二分子膜の展開方法がFO膜としての性能に与える影響を検討し、FO膜として最適化する。1-2.高分子液晶垂直配向チャネル膜の創製:液晶ブロック共重合体薄膜の透水性を向上させるため、透水チャネル中のPEO鎖除去を目的としてブロック共重合体間に熱分解性官能基を導入し、熱処理によるPEO除去を試み、透水性および塩阻止性を評価する。1-3.革新的ロバスト無機ゼオライトFO膜の創製:ZSM-5等のゼオライトが持つ親水性ミクロ細孔の特性を利用して、安定性が高く比較的高い温度にも耐える新しい無機FO膜を創製する。ZSM-5膜の耐熱性・耐酸性を生かしたFO特性を明らかにするためにpHおよび温度依存性について検討する。同時に新規な無機FO膜の開発を並行して進める。1-4.計算機科学による高機能FO膜開発支援:MD計算によりアムホテリシンBのような配列型水チャネルにおける透水性および塩の拡散性に及ぼす影響を評価し、水チャネルの構造や大きさがFO膜性能に及ぼす影響を検討する。また、シミュレーションで得られた知見を新規チャネル膜設計にフィードバックし、高透水性FO膜開発を支援する。 2.新規刺激応答性駆動溶液(DS)の創製 熱応答性イオン液体の温度依存的浸透圧発現機構の解析をさらに進め、イオン液体DSの最適化を図る。また、これら各種イオン液体を保持した成形加工技術についても検討する。 3.FO膜透過とDS再生を含む連続システムによるFS評価とFO膜システムの実証 構築した小型連続FOシステムを用いて、本研究で開発したFO膜とイオン液体DSの性能評価を進めるとともに、それを基に、連続運転における物質収支、エネルギー収支のモデル化を行う。
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