研究課題/領域番号 |
18H03855
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
都留 稔了 広島大学, 工学研究科, 教授 (20201642)
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研究分担者 |
福原 長寿 静岡大学, 工学部, 教授 (30199260)
野村 幹弘 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (50308194)
伊藤 賢志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (90371020)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膜反応器 / シリカ / 触媒 / 反応 / 膜分離 |
研究実績の概要 |
本研究は,① シリカ膜の高機能化・ロバスト化,② 触媒・触媒膜の開発,③ 膜型反応器への応用,④ 膜型反応システムの評価を行うことを目的とするが,初年度の2018年度は①および④に注力し,②,③については2019年度以降に研究を開始する ①ゾルゲル法シリカに関して,Bis(triethoxysilyl)ethane(BTESE)などの架橋型アルコキシシランを前駆体として用い,様々な製膜条件(水・酸モル比,Alドープなど)でSiO系ネットワークの最適化を図った。さらに,耐熱材料であるSiC系セラミック前駆体として,Allylhydridopolycarbosilane(AHPCS)およびPolytitanocarbosilane(TiPCS)を用い,新規分離膜の開発を行った。He/N2透過率比は5程度だが,He透過率1.4x10-6 mol/(m2 s Pa),He/SF6>5000,500℃空気24h暴露においてもほぼ安定であった。 高温水素透過用熱CVDシリカ膜の開発については,基材の内側にO2を,外側にN2バブリングでethyltriethoxysilaneをシリカ源として供給し,蒸着温度500℃,蒸着時間60 minとした。蒸着温度での単成分ガス透過試験にて,H2透過率2.45×10-7 mol/(m2 s Pa), H2/N2透過率比341の結果が得られた。並行して,膜反応器試験の準備を進めた。 陽電子消滅(PALS)およびエリプソメトリー(EP)法による評価については,細孔構造の焼結メカニズムを解明するためPECVD法により多孔質シリカ膜を作製するとともに細孔構造を評価し,ミクロ多孔質モデル膜のための成膜プロセスパラメータを整理した。 ④開発膜を用いた膜型反応器を構築するために,水素分離膜を介して脱水素反応(メチルシクロヘキサン脱水素,吸熱反応)と水素化反応(CO2メタン化,発熱反応)を同時に実施するメンブレンリアクターを想定し,そのシステム特性を評価するための数値シミュレーターを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各研究機関は連携しながら研究を進めており,おおむね順調に進展している。それぞれの研究進捗状況は以下の様にまとめられる。 ①ゾルゲル法に関しては,SiO系ネットワークの最適化により,BTESE膜が中温度域での高い水蒸気透過率と選択性(1x10-6 mol/(m2 s Pa)以上,H2O/N2>6,400 @150℃)を示すことを見出した。さらに,SiO系よりRobust性が期待されるSiC系の製膜に成功した。 CVDシリカ膜に関しては,アルカン脱水素反応に向けて500℃の高温にて使用可能な水素透過型熱CVD膜の開発に成功した。これまで精力的に検討していたシリカ源であるpropyletriethoxysilaneがもつプロピル基よりも小さな有機置換基であるエチル基をもつethyltriethoxysilaneを用いることで,高温にて高い選択性を示す膜が得られることを見出した。 ケイ酸エチルをネットワーク前駆体としてシクロヘキサンと混合して堆積した有機シリカ複合膜(400nm厚)を600℃で焼成し,初期空げき率35%のミクロ多孔質シリカ膜を作製,大気中での細孔構造の経時依存性をEPで評価した結果,最初の30日間で空げき率が9%低下することがわかった。 ④膜型反応器の数値シミュレーション予測に関する反応速度式の評価や対象システムの物性推算が課題であったが,順調に解決することができた。開発した数値シミュレーターから,水素分離膜を介して脱水素と水素化を同時に行なう膜型反応器は,大きな反応熱エネルギーの相互利用によって各反応が効率的に進行すること,またエクセルギー的にも有利な操作を可能とすることが予測された。
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今後の研究の推進方策 |
シリカ膜開発については,ゾルゲル法およびCVD法ともに2018年度に引き続き研究を推進してゆく。2018年度に製膜に用いる前駆体および製膜手法により,膜分離特性が大きく異なることが明らかとなった。そこで開発膜の特性に応じて最適な膜反応系の探索と触媒膜の開発および反応実験に着手する。 ゾルゲル法シリカ膜に関しては,メタネーションあるいはジメチルカーボネイト合成など高温脱水反応への適用,またSiC系膜に関しては比較的大きな細孔であったために,気相系よりは液相系への応用展開を模索し,エステル化あるいはエステル交換反応の膜反応への展開を図る。 熱CVD膜について,プロパン脱水素膜反応器試験を行う。まず,膜反応器試験にて,水素引き抜きの有無について検討する。プロパン脱水素は,脱水素反応であるため,モジュール内の温度分布についても考察を行う。また,システム化に向け,選択性の異なる膜の試験も行う。並行して,バイモーダル触媒膜作製の準備を進める予定である。 PALSとEPによる細孔構造評価に関しては,ミクロ多孔質モデル膜の成膜パラメータの整理を進めるとともに,作製したモデル膜を用いて焼成条件と雰囲気条件を変化させたときののPALSとEPによる評価を進める。評価結果に基づいて細孔構造と成膜パラメータ,処理条件との関係を明らかにし,焼結メカニズムを解明する。 触媒膜シミュレーターでは,分離膜を現在開発中のシリカ系分離膜とした場合の数値シミュレーター構築に着手する。また,適用する反応系も脱水素系についてMCHの脱水素からアンモニアの分解反応に拡張した数値シミュレーターの開発に関して検討する。開発したシステム評価から,再生可能エネルギー利用を想定した新規な膜分離型反応システムとしての評価を実施する。
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