研究課題/領域番号 |
18H03856
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岸田 昌浩 九州大学, 工学研究院, 教授 (60243903)
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研究分担者 |
山本 剛 九州大学, 工学研究院, 准教授 (20321979)
梶原 稔尚 九州大学, 工学研究院, 教授 (10194747)
深井 潤 九州大学, 工学研究院, 教授 (20189905)
渡辺 隆行 九州大学, 工学研究院, 教授 (40191770)
柘植 義文 九州大学, 工学研究院, 教授 (00179988)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 毒物除去 / 接触液相反応 / 反応機構解析 / プロセス解析 / 亜ヒ酸酸化 / セレン酸還元 / 担持貴金属触媒 |
研究実績の概要 |
1) 触媒反応機構の解明: これまでに亜ヒ酸およびセレン酸が固体触媒上で活性化されており,酸化剤も還元剤も存在しない環境下でも亜ヒ酸とセレン酸が互いに酸化と還元を行う反応が進行することを初めて見出し,その特許を出願した.この発見は学術的に重要であるだけでなく,廃液処理プロセスを大きく変革する成果である.また,触媒上で活性化されない鉄(III)イオンを酸化剤とした亜ヒ酸酸化でも触媒による反応促進効果を確認できた.したがって,酸素による亜ヒ酸の水中酸化反応がLangmuir-Hinshelwood機構で進行していることが明らかとなった. 2) 触媒の長寿命化: セレン酸還元反応では触媒の急速な失活が問題で,当初は触媒再生プロセスの設計を重要視していた.しかし,本年度の検討により,酸素を充分に除去した溶液中で,ロジウム触媒を用いてホルムアルデヒドによるセレン酸の還元反応を行うと,触媒がほとんど失活しないことを見出した.これにより触媒再生ユニットを常時運転する設計が必要でなくなった. 3) 管型反応器による反応試験と反応速度解析: これまでの回分反応試験では,亜ヒ酸酸化速度に対する酸素濃度の次数と反応速度定数を求めることができなかった.しかし,管型反応器を用いた反応試験を行い,その際の酸素枯渇条件から逆算することで,酸素濃度の次数・定数を求めることができ,反応速度式全体を決定することができた.ただし,1)の反応機構に基づいた微修正は必要である. 4) プラント設計: 2)の成果を受けて,再生器ユニットの検討を縮小し,3)で得られた反応速度式を用いて流通反応器の設計を行った.触媒性能が反応器ならびにプラント全体に及ぼす影響を調べるまでには至っていないが,その検討を行う準備を整えることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究当初の予想を裏切る発見によって,特許を出願できたが,プラント設計の検討が遅れた.その発見とは,亜ヒ酸酸化がLangmuir-Hinshellwood機構に従っていたことである.亜ヒ酸が触媒上で活性化されるとは予想できなかった.これは学術的に興味深い発見であるが,そのためにプラント設計に必要な反応速度解析実験を条件を変えて繰り返す状況となった.また,セレン酸還元における触媒寿命を劇的に改善することに成功したため,当初は非常に重要と考えていた触媒再生ユニットの必要性が低くなり,プラント全体を見直すことになった.これらの変化により実験・計算のやり直しが多くなって論文発表が遅れたが,次年度に挽回する.
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今後の研究の推進方策 |
1) 流通反応器を用いた反応速度解析を行うことで,得られている反応速度式の修正を行う. 2) 再生ユニットは連続プロセス部からは切り離し,縮小した処理プラントの設計を行い,触媒性能が反応器および処理プラントに及ぼす影響を定量的に明らかにする. 3) これまでの成果を論文発表する.
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