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2020 年度 実績報告書

難分解性プラスチック分解菌の探索とその機能を利用した加工・リサイクル技術の開発

研究課題

研究課題/領域番号 18H03857
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

宮本 憲二  慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (60360111)

研究分担者 寺本 真紀  高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 准教授 (60545234)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワード難分解性プラスチック / 分解 / 微生物 / バイオリサイクル
研究実績の概要

1)PET分解酵素の機能改変と活性向上(慶應義塾大学・宮本):熱安定性の高い加水分解酵素の中から、発現効率の面よりThermobifida fusca由来クチナーゼ (TfCut2)を選択した。そして、この酵素は、Ideonella sakaiensis由来PETaseが速やかに失活する65℃においても高いPET分解活性を示した。次に、負の表面電荷を持つTfCut2のPET樹脂への吸着促進を期待して、カチオン性界面活性剤を反応系に添加した。その結果、無添加と比較して分解活性が13倍向上した。そして、反応開始48時間後でも反応初期と同等の分解速度を示した。一般的に、界面活性剤は酵素の変性作用を持つ。しかし、界面活性剤添加、65℃、48時間という酵素にとって過酷な条件においてもTfCut2は高い活性を維持し、実用的であることが示唆された。
2)酵素の修飾による分解活性の向上(慶應義塾大学・宮本):化学修飾を行うための連結部となるアミノ酸としてシステインを選択して、PETaseの変異体の作製を行った。その結果、PETの分解活性を失わないシステイン変異体を複数得ることに成功した。次年度以降において、この変異体を用いて化学修飾を行い、活性向上を検討する。
3)難分解性プラスチック分解微生物の探索(高知大学・寺本):PP分解能を持つ細菌のタイプを明らかにした。このうち新たに獲得した菌株は、(PEの部分骨格を持つ)直鎖アルカンを、(PPの部分骨格をもつ)分岐アルカンよりも好んで分解した。さらに、高温(50℃)でPE・PP分解する候補株を海洋および土壌環境からそれぞれ選抜した。また、直鎖アルカンと分岐アルカンの分解は、固体培地を用いた方が、液体培地の時よりも、低温で分解されやすい(条件により至適分解温度が異なる)ことが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1)PET分解酵素の機能改変と活性向上(慶應義塾大学・宮本):熱安定性のThermobifida fusca由来クチナーゼ (TfCut2)を用いることで、65℃という高温でもPET分解反応が進もうことを見いだした。また、反応系にカチオン性界面活性剤を反添加することで、無添加と比較して分解活性が13倍向上した。さらに、反応開始48時間後でも反応初期と同等の分解速度を示すことを見いだした。したがって、界面活性剤添加、65℃、48時間という酵素にとって過酷な条件においてもTfCut2は高い活性を示し、実用的であることが示唆された。目標を十分達成することができた。
2)酵素の修飾による分解活性の向上(慶應義塾大学・宮本):化学修飾を行うための連結部となるアミノ酸としてシステインを選択して、PETaseの変異体の作製を行った。そして、PETの分解活性を失わないシステイン変異体を複数得ることに成功した。酵素修飾への重要な段階をクリアーすることができた。目標に対して少し遅れ気味であったが、順調に進行している。
3)難分解性プラスチック分解微生物の探索(高知大学・寺本):PP分解能を持つ細菌のタイプを明らかにすることに成功した。このうち新たに獲得した菌株のアルカン分解の傾向を把握することにも成功した。さらに、高温(50℃)でPE・PP分解する候補株を海洋および土壌環境からそれぞれ獲得することができた。複数の候補株が得られたことは、大きな成果であった。

今後の研究の推進方策

1) PET分解酵素の機能改変と活性向上(慶應義塾大学・宮本):熱安定性の高いPET分解活性を持つクチナーゼ様酵素は、高温での高結晶性PETの分解に有利と考えられる。そこで、これらの酵素を用いて高温での反応を検討し、結晶化度の異なるPETフィルムに対する分解特性の把握を行う。また、それらの情報とPETaseの活性部位の構造情報を統合して、クチナーゼ様酵素の改変を行い分解活性の向上した変異体に取得を試みる。
2)酵素の修飾による分解活性の向上(慶應義塾大学・宮本):前年度までに界面活性剤の添加により酵素とPETの相互作用を改善し、分解活性を100倍以上高めることに成功した。しかし、界面活性剤は酵素の変性剤であり、廃液処理の問題もある。そこで、PET分解酵素表面を疎水性アミノ酸に置換した変異体を作成して、界面活性剤無添加での分解活性の向上を検討する。また、前年度に作成したPETaseのシステイン変異体の酵素表面を化学修飾することにより活性向上を検討する。
3)難分解性プラスチック分解微生物の探索(高知大学・寺本): 明らかにしたPP分解菌の解析を進め、効率の良いPP分解系を構築していく。また、海洋・土壌環境から選抜した、高温(50℃)でPE・PPを分解する候補菌株を解析し、高温での分解系の構築も試みる。そして、分解機構も推定していく。さらに、PE・PP高分解菌を、土壌環境から新たに探索する。

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公開日: 2022-12-28  

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