研究課題/領域番号 |
18H03858
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
Chen Yong 東北大学, 材料科学高等研究所, 教授 (30806732)
|
研究分担者 |
谷垣 勝己 東北大学, 材料科学高等研究所, 教授 (60305612)
熊谷 明哉 東北大学, 材料科学高等研究所, 准教授 (50568433)
井土 宏 東北大学, 材料科学高等研究所, 助教 (20784507)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | マイクロ・ナノデバイス / 低温物性 / 超伝導材料・素子 |
研究実績の概要 |
理想的な二次元構造を有する原子層、1層からなる二次元材料は、理想的な電子伝導からバルクの物性を凌駕し、特異な物理現象を有する。本研究提案では、二次元材料の理想構造を最大限に活かした新規デバイスの構築を行うことを目標として、例えばh-BNを中心に絶縁体である二次元材料をトンネル障壁としたジョセフソン素子の構築やその物性評価を行う。また、高品質な原子層を用いたヘテロ構造の構築技術を用いて、二次元材料の特異性を制御ないし、機能性を創発するデバイス構造を構築する。更に、電界または磁場を印加することで、低次元における特異な物性を評価する。 本年度は、始めにグラフェン、窒化ホウ素(hBN)や二次元磁性材料であるCr2Ge2Te6などを用いてその単結晶のへき開及び転写を行い。原子数層からなる二次元デバイス作製やそのヘテロ構造の作製などに重点を置いた。光学顕微鏡、ラマン分光法、原子間力顕微鏡などを用いて、膜厚、層数や欠陥密度などを同定した。また、ヘテロ構造作製のために必要な光学顕微鏡を搭載した転写用装置の開発も行った。更に、それらの素子の物性評価のために電子線リソグラフィーなどを用いて、素子構造を作製することで、電子デバイスを構築し、原子層からなる素子の特異な輸送特性や磁性の振る舞いを測定した。加えて、これらヘテロ構造の特異物性の評価するため電気化学顕微鏡を含めた電子・イオンの挙動についても検証することに成功した。これらの結果から、ヘテロ構造におけるキュリー温度の変化の追跡や構造(エッジや歪、欠陥など)がどの様に物性変化に影響を及ぼすかなど多角的な視点で検証することに成功している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、始めに多様な二次元材料単結晶を中心に用いて、それらをへき開し基板転写を行うことで原子膜の作製を行ってきた。一般的に用いられるグラフェンなどは容易に層数の同定や原子膜厚まで作製することが可能であったが、一部Cr2Ge2Te6などの単結晶は数マイクロメートルの大きさと薄さを兼ねそろえた材料を大量作製することは困難であった。また、ヘテロ構造作製用の光学顕微鏡を搭載した装置開発については、大気曝露なく不活性ガス雰囲気化で構築する必要があったが、ガス循環精製機が付随したグローブボックスを用いることでこれが可能となり高品質で清浄な界面を持った素子の作製が可能となった。また、素子構造に用いる電極の作製に関しては金属蒸着機の選定などにより少し予定よりも遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策として、高品質な単結晶二次元材料を利用し、大気曝露なく構築した清浄界面を有する二次元材料素子及びそのヘテロ構造の作製を行う。また、これらと超伝導物質やトポロジカル絶縁体などの材料との組み合わせ及びそのヘテロ界面で起こる機能性創発とメカニズム理解を行う。また、ヘテロ構造の作製時の角度制御や加熱機構の導入を行い、多様な素子構造の作製を行う予定である。これらを可能とすることで、現在、遂行しているジョセフソン接合界面の物性評価のみならず、他の界面機構の解明にも展開していく予定である。
|