研究課題
我々は2019年度に、オールエピタキシャルのペロブスカイト酸化物LaSrMnO3/LaAlO3/ SrTiO3ヘテロ構造を作製し、スピンポンピング実験により6.7nmの大きなスピン流電流変換効率を得ることに成功していた。しかし、絶縁体であるLaAlO3でスピン流が減衰し変換効率が低減している可能性を懸念していた。今回は、LaAlO3をLaTiO3に置き換えて研究を行った。LaTiO3は元来は反強磁性モット絶縁体であるが、通常は、歪みなどにより常磁性金属になっている。本研究以前は、このような強相関物質のスピン流に対する寄与は不明であった。実験の結果、全材料系を通して世界最大値である193.5nmの巨大な変換効率が低温で得られた(査読中)。本現象の理論的な解析も進めている。本系では、Tiの3d軌道のうちスピンを含め6つの軌道が伝導を担っている。強い閉じ込め効果のため、極めて複雑な量子化が起こっている。有効強束縛近似法を用いた計算を行い、各軌道のスピン流電流変換に対する寄与を見積もった結果、特にdxy軌道の第2量子準位が極めて大きな寄与をもつことが明らかになった[Appl. Phys. Express (2022)]。これは、電子軌道の量子化の制御によりスピン流電流変換を制御可能とする新たな知見と言える。オールエピタキシャル強磁性半導体GaMnAsを用いてスピン流-電流変換の研究を進めており、昨年度、スピントルク磁化反転現象においては世界最小の電流密度である4.6x10^4 A/cm^2での磁化反転に成功していた。今年度はさらにゲート変調実験を行い、スイッチング電流密度のゲート変調に成功した。薄膜表面のRashba型のスピン軌道相互作用が変調されていることに起因していると考えられる。スピントルク磁化反転を人工的に制御できる新たな可能性を示す結果と言える(査読中)。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (32件) (うち国際学会 9件、 招待講演 10件) 備考 (1件)
Appl. Phys. Express
巻: 15 ページ: 013005
10.35848/1882-0786/ac435c
巻: 15 ページ: 033001
10.35848/1882-0786/ac5221
Phys. Rev. Applied
巻: 15 ページ: 064019
10.1103/PhysRevApplied.15.064019
AIP Advances
巻: 11 ページ: 115014
10.1063/5.0062666
巻: 11 ページ: 125029
10.1063/5.0077052
http://www.cryst.t.u-tokyo.ac.jp/ohya/