研究課題/領域番号 |
18H03863
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
桑畑 進 大阪大学, 工学研究科, 教授 (40186565)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 量子ドット / カドミウムフリー / 蛍光材料 / コア・シェル構造 |
研究実績の概要 |
1.MOFをシェルに用いた量子ドットの合成:金属有機構造体(Metal Organic Framework (MOF))をシェルとして量子ドット表面に修飾する方法の開発ついては、昨年度のZIF-8に引き続き、MOF-5、CPO-27-Mgを利用することにも成功している。量子ドット表面にMOFの構成成分のひとつを吸着させ、それを種にMOFを成長させるという方法によって、MOFが直接量子ドットに接触しているので、電子的な接触ができている。これは、後述するMOFと量子ドット間での電子交換を行わせるには好都合の構造である。 2.光捕集アンテナによる発光強度増加:昨年度に行った研究をさらに拡張し、光吸収と蛍光発光するMOF-5について、MOF-5の発光が量子ドットにエネルギー移動できるように設計した。その結果、MOF-5と量子ドットの両者が光励起する波長の光を照射することで、量子ドットによる発光のみが観察されたが、その量子エネルギー変換効率は量子ドット単独のそれより2倍以上増加する結果が得られた。 3.電気伝導による電界発光素子の作製:電子移動能を有するマトリックスと量子ドットとの複合体を発光部に用いて、ELの電子構素子を形成し電気発光挙動を調査した。素子構成としては、有機EL等の模倣から開始したが、電子輸送層、ホール輸送層の電子構造と量子ドットのそれとの関係を精査し、よりマッチングする材料を組み合わせることによって、発光効率は数倍~十数倍に増加し続けており、実用的素子への可能性が大きくなっている。 4.欠陥発光からバンド端発光への遷移挙動の解明:AgInS2/Ga2S3コア・シェルナノ粒子の単一粒子計測から、バンド端発光のみ示す粒子、欠陥発光のみ示す粒子、両方の特徴が交互に現れる粒子、の3種類が含まれることが明らかになり、溶液中のナノ粒子が一様ではないことが明確とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
MOFを量子ドットのシェルとして用いることができる事を明らかにできていること、MOFの光学特性と量子ドットのそれとを機能的に複合できること、そして、その光学特性を電気的に駆動できるという、量子ドットを実用的な発光素子として用いることの可能性を着実に明確にしている。これほど短期間で研究を推進できたのは、本研究課題が採択されたおかげである。学術的価値も大きく、多くの論文を出版できそうであり、特許も着実に申請し続けることになる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで合成してきた複数の量子ドットを取り込んだMOF結晶の合成、ならびに一つの量子ドットを取り込んだシェル材料のナノ結晶について、それぞれ合成した材料に適したデバイスへの転換に主眼を置いて基本性質を調査する。当初の予定より研究の推進のペースは速いので、引き続きそれぞれの研究課題を前倒ししていく予定である。
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