研究課題/領域番号 |
18H03874
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松田 巌 東京大学, 物性研究所, 准教授 (00343103)
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研究分担者 |
近藤 剛弘 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (70373305)
冨中 悟史 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (90468869)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 単原子シート / キャリアダイナミクス / ディラック / 原子層 |
研究実績の概要 |
本研究ではグラフェンを超えるディラック電子系を有した原子層材料としてホウ素化合物シートを中心にその開発とダイナミクス研究を行うことを目的としている。 2018年度では蜂の巣構造のボロフェンを水素化したHB単原子シートについて主に取り組んだ。第一原理とタイトバインディング模型による電子状態計算を行った結果、このHBシートは半金属であることが分かった。そして実際の試料を合成して、X線分光測定による電子状態解析を行ったところ、その確認もできた。本研究ではボロフェンの水素化に伴う電子状態変化を詳細に追跡したため、HBシートの電子構造に対する物質設計の指針を得ることができた。本成果は論文発表した。一方、2018年度では本HBシートについて電気伝導測定も行なっており、上記の電子状態に関する結果を裏付けると共に、本物質特有の輸送特性も観測した。本結果についても論文発表を予定している。 2018年度中に準結晶2層グラフェンが発見され、新しいディラック電子系を有していることが報告された。そこで、本研究では高次高調波レーザーを用いた超高速時間分解分光実験を実施し、その超高速キャリアダイナミクスを調べた。その結果、これまでに我々が観測した従来の単層及び2層グラフェンのものとは異なる動的プロセスを観測した。現在新たな高速デバイスとしての可能性を検討している。 2018年度では、代表者は単原子シートに関する教科書(洋書)をElsevier社より出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ホウ素の自立単原子シートであるHBシートについて、理論計算、分光実験、輸送測定の一連のデータを揃えその電子状態を明らかにした。その成果論文を発表及び投稿ができたと共に電子状態を制御した単原子シートの設計指針を立てることができた。 また、新しいディラック物質である準結晶2層グラフェンについて超高速時間分解分光実験を実施し、世界に先駆けてそのキャリアダイナミクスを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度に実施したHBシートの電子状態研究では、本物質特有な三中心二電子結合とその配置に対する対称性が電子構造を決定する要因となっていた。そこで、これをもとに本グループで物質設計を行ったところ、ディラックフェルミオンを有した新たなホウ素化合物シートの可能性を見出した。今後はその電子状態を理論的に検証すると共に、本グループが開発した溶液剥離法を実施してシート合成とその評価をX線分光で行う。 一方、2018年度中に我々は基板上への原子蒸着による合成法でもディラックフェルミオンを有した新しい単原子シートを見出している。次の段階として、そのキャリアダイナミクスを高輝度放射光及び高次高調波レーザーを用いた時間分解光電子分光測定により明らかにする。そしてこれらを結果を踏まえて、通信技術開発の研究グループと議論を行い、デバイス利用としての展開を図る。
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