研究課題/領域番号 |
18H03877
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
平原 徹 東京工業大学, 理学院, 准教授 (30451818)
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研究分担者 |
秋山 了太 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40633962)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 物性実験 / 2次元物質 / 強磁性 |
研究実績の概要 |
2019年度は前年度より研究を進めているMnとTeをBi2Te3に共蒸着して形成されるMn,Te/Bi2Te3の詳細な研究を行った。透過電子顕微鏡観察により、MnとTeの量に応じて、MnBi2Te4とMn4Bi2Te7の二つが形成されることが分かった。前者に関して低速電子回折により詳細な構造を決定した後、高分解能角度分解光電子分光測定を行ったところ、16Kでも表面ディラックコーンにはギャップが生じていなかった。一方、X線磁気円二色性(XMCD)測定により磁化特製を評価すると、やはり5.6Kまで常磁性を示した。よってMnBi2Te4では低温まで強磁性の性質を示さないことが明らかになった。これは明確な強磁性を示したMnBi2Se4と大きく異なっており、TeとSeの違いが効いているものと考えられるが詳細は検討中である。 Mn4Bi2Te7に関しては単一相の試料を作製することができなかったが、2018年度に着目していた表面ディラックコーンはこれに帰属できることが第一原理計算との比較から明らかになった。そして、XMCDによって測定された強磁性と常磁性のMn成分はそれぞれMn4Bi2Te7とMnBi2Se4のものであると同定できた。両者は反強磁性的にカップルしており、そのエネルギースケールがMn4Bi2Te7の強磁性キュリー温度25Kよりも高い200Kまで存在しているので表面ディラックコーンギャップが200K程度まで存在しているものと推定される。 上記の他に典型的な2D v-DW強磁性体であると議論されているVSe2の作製と電子状態測定を行った。蒸着時の基板グラファイトの温度が250℃ではVSe2が形成されるが400℃だとV5Se8になり、それに伴ってバンド構造が異なることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mn,Te/Bi2Te3に関して総合的な理解が得られ論文を投稿でき、さらにVSe2というその強磁性特性の有無が議論されている物質に関しても試料作製に成功したので順調に研究が遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はMnBi2Se4、MnBi2Te4ともに1層だけでなく多層になった際の電子状態、磁化特性の変化に着目する。特にMnBi2Te4は単層では5.6Kまで常磁性であるが、多層では10-20KでMn層間での反強磁性的な秩序が生じることが知られているので、層数を1,2,3…と制御して秩序が生じる温度を測定し、ディラックコーンへの影響を調べる。 同時にMnBi2Se4、MnBi2Te4ともにSbをドープすると同時に、ホールバーデバイス構造を作製してイオン液体法によってフェルミ準位の制御を試み、異常ホール効果や量子異常ホール効果の発現およびその発現温度の高温化を検証する。 VSe2、V5Se8についてはXMCDを用いて磁化特性を測定し、強磁性の発現およびそのキュリー温度に関する議論に決着をつける。さらに第一原理計算と比較をし、構造・電子状態・磁化特性に関して総合的な理解を得る。
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