研究課題
本研究では、物質の融着、転移導入過程で散逸される力学的エネルギーの検出技術を発展させながら走査型プローブ顕微鏡(SPM)の能力を拡張し、ナノサイズの物質接合の電気・力学特性を評価した。本年度、超高真空透過型電子顕微鏡(TEM)ホルダーに長辺振動水晶振動子(LER)を力センサーとして組み込んだTEM-SPM複合装置による原子鎖の観察・力学測定の研究がさらに進展した。LER端とそれに対向する電極の間に金(Au)の細線を張り、その細線の破断・接触をTEM観察しながら繰り返すことで[111]方位を持つ単結晶金接合を形成した。その接合を引っ張りながら接合の電気伝導と力学特性を同時計測した。すると、接合の最小断面積に対応する電気電導と、接合の等価バネ定数に対応するLERの共振周波数変化が減少した。この際のLERの振動振幅は27 pmと小さくTEM像を劣化させずに接合の原子配列も解析できた。接合を、薄い板バネの直列結合、および、その断面内で最表面と内側でヤング率が異なるモデルで近似して、最表面と内側のヤング率を変数として実験結果を数値解析した。すると、内側はAuバルクのヤング率(~120 GPa)と同じである一方、最表面のヤング率は~20 GPaとなった。これは表面原子の結合のソフト化を意味していて、ナノ材料の機械特性のサイズ依存性を明確に示す結果となった。また、LERの振幅を大きくしてある閾値を超えると、LERの振動エネルギーが大きく散逸することを見出した。接合原子面のスリップモデルを仮定し、臨界剪断応力が~0.9 GPaであることを算出した。これは散逸エネルギー測定によって接合の塑性変形を評価できることを意味する。その他、ナノサイズの膜厚を持つマイカ絶縁極薄膜を試料とした散逸エネルギーのSPM測定を進め、誘電極薄膜の誘電損失に基づく散逸エネルギーを測定できることを見出した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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