研究課題/領域番号 |
18H03883
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
谷垣 勝己 東北大学, 材料科学高等研究所, 教授 (60305612)
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研究分担者 |
下谷 秀和 東北大学, 理学研究科, 准教授 (60418613)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 有機半導体 / 発光素子 / レーザ / 電界駆動モード / 光学駆動モード |
研究実績の概要 |
電場駆動型の有機半導体レーザは、2000年にBell研究所によりScience誌に報告されたが、その後研究は捏造として科学会のスキャンダルになった経緯がある。しかし、この研究の概念は正しく、その後、実現に向けてさまざまな挑戦が試みられたが、成功に至らなかった困難な研究である。本研究では実現できる可能性を示し、有機半導体レーザ発振を電流駆動で実現する事を目標としている。電界効果トランジスタ構造で有機半導体発光素子を電子と光学の両方の観点から詳細に検討して、発振の確認と高性能化に向けた研究を遂行する。 電場駆動の有機半導体レーザ(el-OSCL)実現のためには、技術革新が必要である。電界発光素子(Electroluminescence:EL)がレーザ(Electroluminescence Laser: ELL)として確認されるためには、3つの基本的な実験データを示す必要がある。(1)レーザの閾値---注入された電荷粒子数(N)と発光強度(I)との関係に明確な閾値が存在して、閾値を境として非線形に発光強度が増加する事。(2)急峻な発光スペクトラム精鋭化---閾値を越えると一つの発光波長が選択されて、発光スペクトル幅が急激に狭窄化する現象。(3)共振器増幅---共振器構造で反復増幅されている事。 今年度は、このような電界駆動レーザー発振の実験的証拠を得る事を目的に詳細な実験を遂行して、以下の結果を得た(1)仕事関数の小さいCa/CsF(電子注入電極)と大きいAu(ホール注入電極)のヘテロ電極を用いてレーザ発振に必要な閾値電流の存在を確認した。(2)両極性キャリヤ(電子と正孔)注入/伝達機能よび高発光機能を有する有機半導体(BP3T)を光学媒体として選択して、電場駆動有機半導体レーザの可能性を示した。(3)BP3Tを光媒体として、分布帰還型(Distributedレーザ発振を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有効な実験を遂行して、以下の重要な結果を得ている。 (1)仕事関数の小さいCa/CsF(電子注入電極)と大きいAu(ホール注入電極)のヘテロ電極を用いて、さらに有機半導体表面を単分散のポリスチレン層を積層する事により、レーザ発振に必要な閾値電流の存在を確認した。この状態で、種々のトランジスタ作製条件を変化ささせる事により、良い条件を設定できると考えられる。実験は、良好な方向へ向けて行なわれている。 (2)両極性キャリヤ(電子と正孔)注入/伝達機能よび高発光機能を有する有機半導体(BP3T)を光学媒体として選択して、電場駆動有機半導体レーザの可能性を示す事ができている。今後、実験条件を変化させる事により、有機半導体BP3Tの性能を最適な条件で引き出す事ができる状況にある。 (3)BP3Tを光媒体として、分布帰還型(Distributedレーザの作製条件を検討して、低閾値でレーザ発振する初期的な実験結果を得ている。 実験は、概ね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ研究は、順調に進んでいる。今後、(1)ファブリペロー共振器(FPR)を用いた構造(FPT-OSCL)でより詳細な研究を進める。(2)DFB-OSCLとFPR-OSCLを電場駆動モードと光学駆動モードで比較して、より正確なレーザ発振の議論をする。という方向で研究を推進する予定である。
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