研究課題
螺旋(あるいは右手と左手)のように立体構造がその鏡像と空間的に重ならない性質をキラリティーと呼ぶ。研究代表者は、極微弱な光渦をモノマーに照射するだけで、光重合してできた超巨大な質量(光圧研究で使う微小球の>100倍の質量)のファイバーが光渦の角運動量の向きに自発的に捩じれ、螺旋ファイバーに自己組織化すること(光渦が誘導するキラルな超巨大質量移動)を発見した。しかし、現象のメカニズムの詳細は全く分かっていない。化学反応を光渦で物理的に刺激することで起こる超巨大キラル質量移動の学理を解明できれば、間違いなく光科学・物質科学・デバイス工学にパラダイムシフトをもたらす。本研究では、「光渦が誘導する超巨大キラル質量移動」の学理を探究するとともに、光渦を固有モードとするファイバーレーザー・微粒子マニピュレーター・近接場プローブ・キラリティーセンサーなどのキラルな新奇光学素子(キラルデバイス)の創成を目指す。その成果に基づき、「光渦が誘導する超巨大キラル質量移動の学理に立脚したキラルデバイス工学」という新学術領域を開拓する。本年度は光渦の照射でできる重合体(螺旋ファイバー)を非線形媒質中を伝播する空間ソリトンであると仮定し、光重合過程を空間ソリトンの空間伝播として理論解析した。解析結果は実験を定性的にはよく説明できる。しかしながら、螺旋の単位長さ当たりの巻き数をはじめ螺旋ファイバーの構造を未だ定量的に説明することは難しい。現在、光渦の角運動量転写過程を解析するための力学モデルを検討中である。また、螺旋ファイバーの長さを延長するため、散乱損失・吸収損失の少ない可視レーザーを用いた光重合実験を計画中である。
2: おおむね順調に進展している
光渦の照射でできる重合体(螺旋ファイバー)を非線形媒質中を伝播する空間ソリトンであると仮定し、光重合過程を空間ソリトンの空間伝播として理論解析した。解析結果は実験を定性的にはよく説明できた。その研究成果をACS Photonicsに論文掲載した。
光渦の照射でできる重合体(螺旋ファイバー)を非線形媒質中を伝播する空間ソリトンであると仮定して空間ソリトンの空間伝播を非線形シュレディンガー方程式に基づき理論解析することで、螺旋ファイバーができるメカニズムを定性的に理解した。しかしながら、螺旋の単位長さ当たりの巻き数をはじめ螺旋ファイバーの構造を未だ定量的に説明することは未だ難しい。そこで、現在、光渦の角運動量転写過程を解析するための流体力学的なモデルを検討中である。具体的には、光重合体を粘性流体中の微粒子の集合とみなして光圧としての軌道角運動量がどのように作用するのか解析できるモデルを検討している。また、より長い螺旋ファイバーを創成するため、散乱損失・吸収損失の少ない可視レーザーを用いた光重合実験を計画中である。さらに、ファイバー長をセンチメートルスケールまで長くするため、高次ベッセルビームをはじめとする非回折光を積極的に活用する実験を検討している。
すべて 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
ACS Photonics
巻: 5 ページ: 4156-4163
10.1021/acsphotonics.8b00959
Optics Express
巻: 26 ページ: 22197-22207
doi.org/10.1364/OE.26.022197