螺旋(あるいは右手と左手)のように立体構造がその鏡像と空間的に重ならない性質をキラリティーと呼ぶ。研究代表者は、極微弱な光渦をモノマーに照射するだけで、光重合してできた超巨大な質量(光圧研究で使う微小球の>100倍の質量)のファイバーが光渦の角運動量の向きに自発的に捩じれ、螺旋ファイバーに自己組織化すること(光渦が誘導するキラルな超巨大質量移動)を発見した。 本研究では、「光渦が誘導する超巨大キラル質量移動」の学理を探究するとともに、光渦を固有モードとするファイバーレーザー・微粒子マニピュレーター・近接場プローブ・キラリティーセンサーなどのキラルな新奇光学素子(キラルデバイス)の創成を目指す。その成果に基づき、「光渦が誘導する超巨大キラル質量移動の学理に立脚したキラルデバイス工学」という新学術領域を開拓する。 本年度は、光渦照射によって形成された螺旋ファイバーの光導波特性の計測を行った。ファイバー中にガウスモードを導波すると、円環状強度分布と螺旋波面を有する光渦がファイバーから出射することを確認した。螺旋波面の向きはファイバー形成に使用した光渦の螺旋波面の向きと反転することが分かった。ファイバーを導波するガウスモードと光渦モードの実効屈折率差がファイバーの捩じれピッチで決まる螺旋周期と一致することからファイバーが光渦モード変換器として機能していることが判明した。この結果は、光渦照射によって形成された螺旋ファイバーのデバイス応用の可能性を示唆するものである。
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