郵便物に隠された禁止薬物や、薬局で手渡される処方薬を、開封することなくチェックできる技術は、世界で唯一、我々が開発している光注入型テラヘルツ波パラメトリック発生器(is-TPG)のみである。テラヘルツ波以外の技術ではそれを実現できておらず、また数あるテラヘルツ技術の中でも、我々のis-TPGのみが厚手の遮蔽物越しの分光検査を達成した。我々は、世界に先駆けて多波長is-TPGに成功し、さらに多波長テラヘルツ波を検出側で角度の異なる多波長近赤外光に変換してCCDカメラで撮像する手法で、ワンパルス高速分光への道を拓いた。さらに引き続きこれらの予備実験による成果を融合し、ワンパルス高速テラヘルツ分光システムを開発し、従前より期待されているリアルタイムでの郵便物検査や処方薬検査、および医薬錠剤・粉末の製造過程での全数検査等に資する基盤技術の開発を進めた。 令和3年度に極微弱テラヘルツ波検出方式の分光システム化において、当初計画の距離とアイリスによって雑音成分を空間的に除去する手法に関して、距離が予想外に問題となることが判明した。研究遂行上、雑音成分を空間的に除去することが不可欠なため、極微弱テラヘルツ波検出方式の分光システム化を再検討した。その上で、令和4年6月までに、極微弱検出方式の分光システム性能評価および極微弱検出方式の分光イメージングへの導入を行った。 さらに、分光測定の高安定化を目指し、テラヘルツ波を2ビームに分割して、検出側の画像データ上で校正を取る方式を導入し、サンプル透過光と同時に参照光を取得することで高い安定性が得られることを確認した。
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