研究課題
3次元Metal-insulator-metal(MIM)メタマテリアルを試作するための独自の加工技術の開発を行った.開発した手法では,高速電子ビームリソグラフィ装置や電子ビーム真空蒸着装置,反応性イオンエッチング装置を利用してシリコン表面へのナノ凹凸構造の形成と,その側壁への金属薄膜の形成,さらに上部と下部の金属膜の選択的なエッチングを繰り返し行う事で,2枚の金属ナノフィンがナノメートルスケールのギャップを隔ててシリコン基板表面に垂直に高密度に集積化された3次元Metal-insulator-metal(MIM)構造の試作に成功した.特に金属薄膜の形成ならびにエッチングプロセスの手順と実験パラメータを最適化することで,高い加工精度と再現性が得られる条件を確定することができた.試作した3次元MIMメタマテリアルの光学特性を既設のフーリエ変換型分光器で測定し,設計通りの赤外波長領域に強い光吸収特性が表れることを確認した.また,3次元円錐螺旋構造を持つ金属メタマテリアル構造が広い波長帯域の光吸収特性を持つことを新たに見いだし,有限要素法を用いてその構造の最適化を開始した.3次元円錐螺旋構造は,金属線の巻き数や線幅,縦横方向のピッチ,半径,高さなど多くの構造パラメータがあるため,それらを網羅的に調べる事は計算機シミュレーションでも実験的にも不可能である.そこで,有限個数の構造パラメータを選択してその光吸収スペクトルとの関係を求め,それを教師データとして機械学習手法によって,要求される光吸収特性を示す円錐螺旋メタマテリアル構造を求める手法の研究を平行して開始した.
2: おおむね順調に進展している
3次元MIMメタマテリアルを作製するために必要となる独自の加工技術の開発は概ね完了し,必要となるメタマテリアル構造を試作できるようになった.また,これまでに構築した電磁界シミュレーション環境も問題なく機能しており,昨年度は計算機の増強も行った.加えて,新たに3次元円錐螺旋構造を持つメタマテリアルが広い波長帯域の光を効率良く吸収するという新たな知見を見いだすことができたので,これを足がかりに本研究の目的となる広帯域・高効率赤外吸収体の試作とその特性評価に取りかかっている.3次元円錐螺旋構造メタマテリアルの構造設計については,機械学習技術の導入にも挑戦し,良好な感触を得ている.この研究も継続して進めると共に,実験を通して目的とする特性を持つ構造の実現とその有効性の実証を行っている.
開発した3次元ナノ加工技術と電磁界シミュレーション環境を最大限に活用して,広帯域・高効率赤外吸収メタマテリアルの構造設計と試作を続け,目的とする特性を持つデバイスの実現とその有効性の実証を行う.新型コロナならびに半導体不足の影響で,実験に必要な部材の調達に遅れが出ていたが,この状況も改善されつつある.次年度はこれまでに設計したメタマテリアル構造を1つ1つ試作し,その特性評価を通して目的とするデバイスの実現を目指す.
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