研究課題
今年度は、シンチレータの開発を進めた。材料の合成について、無機ナノ粒子を添加したプラスチックシンチレータの系では、主に酸化物ナノ粒子を溶液中で合成し、その後に(あるいは合成中に)ナノ粒子表面に有機分子を修飾した。最終的にはポリマーに分散させて材料を合成した。あるいは、ゾルゲル法という溶液法を用いた合成を進めた。この手法では、酸化物ナノ粒子を形成する塩化物や塩化酸化物と、その脱水縮重合反応を進める触媒としての酸、プラスチックを形成するポリマーと有機蛍光体とを全て溶液中で混合し、反応と溶媒蒸発とを同時に進めることにより構造を形成した。開発した材料について、基礎的な構造解析を進めた。粉末X線回折により結晶構造の同定を行うとともに、透過型、あるいは走査型電子顕微鏡観察による構造解析も進めた。開発した材料のシンチレーション特性については、基礎的な物性として、シンチレーションの波長(スペクトル)および減衰挙動とを調査した。その上で、高エネルギー加速器研究機構の放射光施設(フォトンファクトリー)における高エネルギーX線検出特性についても調査を進めた。これらの結果、まず、ナノ粒子を合成後にプラスチックへと添加した系については、蛍光体濃度の最適化により、市販の高エネルギーX線検出用プラスチックシンチレータであるEJ256を凌駕する性能を達成した。一方、ゾルゲル法により開発した材料では、EJ256の特性を大幅に上回る検出効率およびシンチレーション収率を達成した。
1: 当初の計画以上に進展している
初年度として、有機無機ハイブリッドシンチレータにおいて、二つの手法での開発手段を確立した上、既に同様の用途を想定した市販品を大幅に上回る特性を達成したため。
今年度には、電子や正孔の捕獲過程を中心的課題として捉える。その上で、捕獲サイト周辺の構造と捕獲能との関連を定量的に解析する。本研究では高次構造の解析が重要となる。粉末X線回折や単結晶X線回折測定により結晶構造の同定を行うとともに、TEMを用いた構造解析も進める。試料によっては小角X線散乱測定も行う。さらに、電子スピン共鳴測定を用い、電子や正孔の捕獲サイトを同定する。さらに、X線吸収分光により、捕獲サイトでの価数変化をとらえ、また捕獲サイト周辺の局所構造を解析する。
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