研究課題
本研究では、有機および無機の特徴を活用しつつ、より性能の高い放射線検出材料の開発を行った。そのうち、今年度には、二つのアプローチでの材料開発を進めた。一つは、有機無機ハイブリッドシンチレータの開発である。無機重元素化合物を添加したプラスチックシンチレータでは、当初、添加に伴う消光が顕著であり、アプローチとしては不適切であると予期していた。しかしながら、ポリビニルカルバゾールにトリフェニルビスマスを添加することにより合成した有機無機ハイブリッドシンチレータでは、トリフェニルビスマスの添加によるシンチレーション収率の低下は限定的であり、高性能材料開発アプローチとして有用であることが示された。一方で、無機ナノ粒子を添加したプラスチックシンチレータでは、ゾルゲル法という溶液法を用いた合成を進めた。ポリビニルカルバゾールをベースとしたプラスチックシンチレータに、ハフニアーシリカ混合ナノ粒子の添加により、市販品を凌駕する性能の実現に成功した。一方で、有機系の放射線計測材料としては、ラジオクロミック材料について多くの成果が得られた。特に、ポリ塩化ビニルをホストポリマーとして用いた場合に、ロイコ色素添加材料での高感度化に成功した。さらに、感熱塗料として知られる分子のポリ塩化ビニルへの添加により、従来材料の20倍以上の感度を有する材料の実現に成功した。これにより、1 mm厚さあたりで0.1 Gy程度の感度を達成し、がん治療における3D線量計測に必要な感度が得られたこととなる。
2: おおむね順調に進展している
有機無機ハイブリッドシンチレータでは、新たなホストポリマーの利用により、重金属錯体およびナノ粒子の双方の添加で高性能材料合成に成功した。また、線量計材料としては、ポリ塩化ビニルの利用による顕著な高感度化に成功した。これらの成果は、当初の予定通りからやや上回るペースでの進行状況であるといえる。
有機無機ハイブリッドシンチレータでは、これまでは1 mm厚程度の材料を作製し、X線計測を想定していたが、次年度については、より大型の材料開発を進め、ガンマ線計測においても有用な材料として提供可能とする。また、有機線量計については、ポリ塩化ビニルベースの高感度材料の3Dプリンタでの造形能の開拓と、3Dプリンタでの造形能の実証されたポリマー材料での高感度化を双方進め、3D線量測定への実用化を確固たるものとする。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (28件) (うち査読あり 28件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (96件) (うち国際学会 2件)
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