研究課題/領域番号 |
18H03892
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大野 雅史 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (90391896)
|
研究分担者 |
松藤 成弘 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 加速器工学部, チームリーダー(定常) (00280743)
神代 暁 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 総括研究主幹 (60356962)
池田 時浩 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 専任研究員 (80301745)
浮辺 雅宏 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究グループ長 (00344226)
清水 森人 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (20613988)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 超伝導転移端センサ / 重粒子線癌治療 / マイクロドジメトリ |
研究実績の概要 |
治療用の炭素やヘリウムの重粒子ビームの精密計測を目的とし、TESピクセルの高性能化および極小化しアレイ状に配置したマイクロドジメトリ用検出器を開発している。本年度は治療用数100MeV炭素線の粒子1個ずつのエネルギー検出、さらには、炭素線入射による動径方向の2次電子の分布を精密に検出するための極小TESピクセル検出器を並行して開発を進めた。極小ピクセル開発としてはそのプロトタイプの素子として10μm角TESピクセルを試作し、その検出特性を評価した。そして、この試作素子を100mK以下に冷却可能な希釈冷凍機にて冷却し、試作素子の電圧、電流特性を評価して素子が超伝導転移領域において安定して動作することを確認し、また信号検出テストとして赤外レーザーを素子に照射し、試作素子が2eV以下の単一光子を識別しさらに光子1個のエネルギーをも検出しできるほどの優れた検出特性を実証した。また、これまでに行った研究実施者がHIMACにて100MeV/uのCイオンビームをTESピクセルに照射して応答評価実験の解析を進め、タングステン製のコリメータ1mm径でビームを絞って希釈冷凍機内に導き、TES検出器に照射する実験体系において、実験結果と実験体系を模擬したシミュレーション結果を比較するなどしたところ、冷凍機内コールドステージ上の検出素子以外へのビームの入射が充分に抑制され、ノイズイベントの低減が図られて入射炭素イオンの精密なエネルギー検出ができていることが示された。これは、今後マイクロビームを照射する実験体系構築を図る上で極めて重要な知見を得たこととなる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
極小化した超伝導イリジウム薄膜ピクセルを用いたTES検出器を作成し、優れた検出特性を実証したことにより、本研究の核心部となる重粒子線ビームのマイクロドジメトリ精密計測技術確立への道を拓いたこととなる。さらに、これまでのTESを用いた重粒子線ビーム計測実験で得られたデータを解析し、実験環境を模擬した体系での計算結果と突き合わせることにより、重粒子ビームをTES検出素子へ導く際、障害となるノイズ原因を突き止め、そのノイズの大幅な抑制を達成する知見を習得したことにより、今後のTESによる重粒子線精密測定環境構築に向けて大きく前進したため。
|
今後の研究の推進方策 |
極小ピクセルTESを1列のアレイ上に配置し2次電子等の入射ピクセルを特定しうる検出器を実現するためには、個々の極小ピクセルの性能をそろえること、そしてその作成プロセスにおける歩留まり率を上げることが必須となる。そこで、今後は超伝導薄膜温度センサとして用いる極小イリジウムピクセル薄膜の成膜および成型時の剥がれや欠けを抑制し、かつ各ピクセルの超伝導転移温度を200mK以下に抑えて、さらなる低ノイズ化を図った検出素子作成プロセスの改良を進める。また、これまでに実施した治療用炭素ビームのTES検出実験での解析を踏まえて検討したビーム入射系再設計の指針を元に、詳細なマイクロビーム入射系の構築を図る。
|