研究課題/領域番号 |
18H03893
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉田 英一 名古屋大学, 博物館, 教授 (30324403)
|
研究分担者 |
丸山 一平 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (40363030)
勝田 長貴 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (70377985)
南 雅代 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (90324392)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 球状コンクリーション / 炭酸カルシウム / シーリング |
研究実績の概要 |
炭酸カルシウム(CaCO3)が数十%以上濃集している炭酸塩球状コンクリーションは,地下岩盤中のとくに堆積岩中に普遍的に,かつ安定に存在することが確認されている.その大きさはメートルを超えるものも存在し,数万~数十万年以上にわたる風化や変質に耐え,その球状形態と内部の化石を保存良好に保つ.例えば北海道で産出する保存良好のアンモナイト化石が,全てコンクリーション中から産出するのはその良い事例の1つと言える.その理由は,コンクリーション中の空隙や亀裂が炭酸カルシウムによって充填・閉塞されることで外部からの地下水の浸透が遮断され,風化・変質反応が抑制されるためである.しかし,そのコンクリーションの形成プロセスや形成速度については,これまで半世紀以上,科学的に議論がなされてきたものの決め手となる証拠やデータを示すことができていなかった. 本年度は,いろいろなバリエーションがある球状コンクリーションについて,生物起源の腐食酸との反応によって形成されたと考えられるタイプの抽出と種類を分類・整理し,形成条件を整理した.とくに日本および海外の事例も含め10種類以上の研究試料を採取しており,これらの地球科学的な産状調査・分析を総合的に実施し,解析及び実験を効率的に実施するための知見を整備することができた.その知見から、基本、日本および海外のコンクリーションに関しても、その形成速度は非常に速く、同じプロセスで形成されることを確認した.そして,その形成条件の一般化を行い,論文にてその成果を公表した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,いろいろなバリエーションのある天然コンクリーションについて,その中で,生物起源の腐食酸との反応によって形成されたと考えられるタイプの抽出と種類を分類・整理し,形成条件を明らかにすることを目的として研究を進めてきた.その対象として,すでに日本および海外の事例も含め10種類以上の研究試料について解析を行った結果,当初の想定通りのデータを得ることができたことから,概ね順調に進捗していると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
初年度の成果にもとづいて,コンクリーションにおいて,炭酸カルシウムの空隙シーリング状態を詳細に解析するために,カルシウムや鉄・マンガンなどの遷移元素の元素濃集状態,炭素・酸素同位体の地球化学的分析を行う.遷移元素は,腐食酸との反応に伴うpH変化のインデックス元素として活用可能であり,炭素・酸素同位体は,生物有機体の腐食酸が起源であるかどうかの確認となる.これらの元素分布を正確に把握することで,最終的に実施するシーリング実証実験の条件設定を明確にする.
|