研究課題
陸上や海底に数多分布するフラクチャーの透水性や力学的強度を知ることは、油ガス・ハイドレート・地熱エネルギー開発において必須である。本研究では、大規模なフラクチャーの特性を、数値シミュレーションと岩石物理学モデルを軸としつつ、地殻の非破壊探査(電気・電磁探査および地震探査)と地質学的・地球化学的調査を組み合わせる新たな技術を開発する。本年度は、テーマ1として、花崗岩地域の地下500mの坑道内において、幅約10mのフラクチャーの透水性や岩盤強度と比抵抗・地震波速度の関連性を議論した。その結果、比抵抗情報と掘削情報からフラクチャネットワーク分布を推定する手法を確立し、透水係数の推定に成功した。テーマ2(陸上活断層の調査:地表~深さ1km程度)については、これまでの解析結果から、活断層付近の地下に低比抵抗帯があることが明らかとなっているが、この空間的な広がりを抑える必要がある。そこで昨年度に引き続き、岐阜県阿寺断層周辺において約10箇所で電磁探査(AMT探査)を実施した。あわせて、西日本各地の活断層沿いの湧水・温泉水の分析を進めて、地殻深部起源の流体分析技術の高度化やモデル化を図った。テーマ3(海底活断層:海底面~深さ数km程度)については、海洋研究開発機構の調査船「かいれい」および「白鳳丸」それぞれ用いた調査航海(12月及び1月)を実施した。12月の航海では、南海トラフ熊野灘の陸側斜面域(水深約2000m~4000m)において、人工電流源を使用した海底電磁探査を実施した。ここには多数の逆断層が分布しており、また海底地殻変動観測も行われているため、地下比抵抗構造とこれらとの比較を今後進める予定である。また1月の航海では、12月の航海で海底に設置した電位差磁力計の回収を行った。海底に設置したすべての装置の回収に成功した。得られたデータを解析することにより地殻・マントルの比抵抗構造が明らかになると期待される。
1: 当初の計画以上に進展している
新型肺炎や調査船の一部機能改修などに伴う調査スケジュールの変更があったものの、南海トラフでの調査航海(2航海)を成功裏に終了することができたため。また陸上活断層での地球物理学・地球化学的調査も順調に進んでおり、結晶質岩の岩石物理モデルの構築も順調に進んでいるため。
テーマ1については、比抵抗・地震波速度などから岩盤のフラクチャ特性(間隙率・透水性)を定量的に求める方法を確立する。テーマ2については、阿寺断層周辺の地価比抵抗構造を高解像度で求めるとともに、既存の掘削データ・地震探査結果との対比を進める。テーマ3については、取得できた海底データの解析をすすめて、海底下の比抵抗構造と活断層分布の関係を議論する。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 11件、 査読あり 11件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 3件)
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