研究課題/領域番号 |
18H03899
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
夛田 博一 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (40216974)
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研究分担者 |
山田 亮 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (20343741)
大戸 達彦 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (90717761)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 単分子接合 / 熱伝導度 / ゼーベック係数 / 無次元性能指数 |
研究実績の概要 |
ナノ接合は、バルク材料とは異なる特性を示すため新しい電子素子への応用を意図した研究が進められている。熱の輸送についても興味が持たれているが、熱は電子の流れとことなってさまざまな物質中に容易に散逸してしまうためその制御が難しく挑戦的な課題である。本研究では、金属ー分子ー金属(単一分子接合)の熱伝導度およびゼーベック係数を測定する手法を確立することを目的とした。金属ナノ接合の熱伝導度の測定には、走査トンネル顕微鏡を用いた報告があるが、接合を一定時間保持することが原理的に難しいため、温度依存性の測定などは困難である。我々は、この問題点を回避するため、メカニカルコントローラブルブレークジャンクション法を採用し、シリコン基板上に微細加工技術を駆使して、ヒーターや熱電対を組み込むことを試みた。微小な温度計には、金属細線の電気抵抗値の温度依存性を利用した抵抗温度計がしばしば用いられるが、抵抗温度計は細線のパターンを抵抗器として利用するため、微細化の限界や自己加熱の問題がある。今年度は、これまでの抵抗温度計に代わる微小な温度計として熱電対を利用する方法を検討し、1 mK オーダーの精度で温度計測が可能な微小熱電対を開発し、その試験として、線幅サブミクロンの金属細線の熱伝導率を計測した。温度計には、金(Au)とクロム(Cr)の細線から成る熱電対を利用した。ヒーターに交流電流を流して加熱し、熱 電対から生じる起電力をロックインアンプにて検出することで、高精度の温度計測を実現した。素子の作製に加えて熱シミュレーションを行った結果、金属の細線は熱抵抗が小さいため、ヒーターや温度計との接続部での熱抵抗が無視できなくなり、測定に支障をきたすことが明らかとなった。そこで、本研究では、ヒーターと試料の間に熱交換器を導入することを工夫し、接触抵抗の低減を図り、広いレンジでの熱コンダクタンス計測を可能にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は熱伝導測定システムの立ち上げと金属錯体分子の接合のゼーベック係数測定を行うこと計画した。前者は、ナノサイズの熱電対の作製過程で、金属線の太さや形状の影響を受けることを見出し、その本質の探究を課題に加えたため、当初の予定とは異なる熱電対の作製となったが、熱交換器の導入などを含め新たな工夫を加えることで、当初の計画より精度の高い熱伝導度測定を実現した。後者に関しては、錯体分子のゼーベック係数の測定に成功しておりほぼ当初の計画通り進行している。ゼーベック係数の測定値が、当初の予想と比べて大きい値となったため、その要因について理論計算による解明を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
測定対象を均一なナノ細線から、分子系への展開をはかる。まず、途中にくびれ(幅 100 nm 程度)を付けたナノ細線に変更し、エレクトロマイグレーションによって、ナノ接合を形成し、熱伝導度の測定を行う。さらに、エレクトマイグレーションによって作製したナノギャップに分子を架橋させて熱伝導率の計測を行う。これまでに架橋構造の作製手法を確立しているベンゼンジチオール分子からはじめ、オリゴチオフェン、錯体分子に測定系を広げる。
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