研究課題/領域番号 |
18H03906
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
澤村 正也 北海道大学, 理学研究院, 教授 (40202105)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | C-H結合活性化 / 不斉合成 / ホスフィン / 銅触媒 / ホウ素化 / アリル化 / β-ラクタム / アルキルボロン |
研究実績の概要 |
有機分子のC-H結合を特定の場所で選択的かつ触媒的に活性化し、炭素-炭素結合やヘテロ元素官能基に変換するC-H結合変換反応は、有機化合物の合成法を革新する手法として期待されている。近年の活発な研究によって多様なC-H結合変換反応が開発されている。しかし、キラル触媒によるC-H結合不斉変換反応の研究例は未だ少なく、今後の飛躍的な発展が必要である。本研究の当該年度の実績は以下の通りである。 〈1. プロリノールーホスフィンの応用〉 銅触媒と末端アルキンを用いるα-ケトエステルの不斉アルキニル化と及び不斉衣笠反応によるα-アルキリデン-β-ラクタムの不斉合成の成果を論文発表した。 〈2. フェノール-カルベン配位子の応用〉 フェノール-カルベン-銅触媒によるアリルボロネーととリン酸アリルの不斉カップリング反応の成果をまとめ論文発表した。 〈3.不斉C-Hホウ素化反応〉 不斉C-Hホウ素化反応の研究において、新規ホスファイト配位子を用いて99% eeを超えるエナンチ選択性を最近達成した。配向基の拡張など合成化学的な展開を行なうとともに、不斉発現メカニズムの解明のための理論論計算とを行った。 〈4.2-アルキルアザアレーンのC-H不斉アリル化〉 配位子スクリーニングの結果として、イソマンニド骨格の両端に単座ホスファイトと嵩高いトリチル置換基を持つ不斉配位子がPd触媒による2-アルキルアザアレーンのC-H不斉アリル化に有効であることを見出し、速度論解析や速度論同位体効果の実験から反応機構を考察し、その成果を論文発表した。トリチル型立体効果部位が、C-H水素結合、C-H-π、π-πスタックなどの2次的相互作用にっよって反応の促進、立体制御に関与していることを推定しており、それを解明するための量子化学計算を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標としていた反応開発がいずれの項目でも論文発表のレベルに到達した。C-Hホウ素化の研究では理論計算が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
〈1. プロリノールーホスフィンの応用〉 Ir触媒―ギ酸系によるケトンの不斉水素化の適用範囲を明らかにするとともに、エナンチオ選択性発現機構に対する配位子―基質間の分散力の効果に注目した反応経路の理論計算を終える。 〈2. フェノール-カルベン配位子の応用〉 フェノール-カルベン配位子の構造改変を行い、高活性・長寿命の銅触媒を開発する。例えばフェノール性水酸基のオルト位にカチオン配位サイトを導入することで、銅と協同的に作用する金属アルコキシドを活性化しつつ、明確な不斉環境を形成する。銅触媒によるシクロプロパノールの開環不斉アリル位アルキル化反応の基質適用範囲を明らかにする。 〈3.不斉C-Hホウ素化反応〉 不斉C-Hホウ素化反応の研究において、新規ホスファイト配位子を用いて99% eeを超えるエナンチ選択性を最近達成した。配向基の拡張など合成化学的な展開を行なうとともに、不斉発現メカニズムの解明を理論論計算と実験の両面から行う。 〈4.2-アルキルアザアレーンのC-H不斉アリル化〉 トリチル基置換キラルジアミドホスファイト配位子を用いる不斉反応のエナンチオ選択性発現機構解明を目指し、反応中間体やそのモデル錯体の単離とX線結晶構造解析を行う。この情報を基にして反応経路の理論計算を行う。特にキラル配位子上のトリチル基と不斉配位子内部の環状糖構造および反応基質の間のC-H/O水素結合、C-H/π相互作用などの分散力に基づく2次的相互作用の働きに注目して解析を行う。さらに反応機構に関する結果を基に触媒構造を最適化し、アザアレーン部位の拡張、第4級不斉炭素中心の構築、アリル基質側不斉点の導入などの課題に取り組む。
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