研究実績の概要 |
本研究の目的の一つは、計算化学を援用することで、光学活性銅(I)触媒の合理的設計を行い、ロンドン分散力などの弱い相互作用をコントロールし、最終的には未踏の研究領域である「非対称稠密型触媒」を開発することである。本年度では、以下の成果を得た。 1. 末端アレンのホウ素化環化反応(Chem. Commun. 2018, 54, 4991):アルキルハライド部位を有するアレン基質に対して銅(I)触媒によるホウ素化を施すと、末端アレン選択的にホウ素化が進行し、生じるアルキル銅(I)中間体がアルキルハライド部位に環化反応下生成物が選択的に得られた。計算化学による反応機構解析を行った。 2. 脱フッ素化ホウ素化による光学活性アリルホウ素化合物の合成法開発(Angew. Chem. Int. Ed. 2018, 57, 7196): CF3基をもつE-アルケンに対して、光学活性銅(I)触媒によるホウ素化を実施すると、対応する1,1-ジフルオロ光学活性アリルホウ素化合物を高収率かつ高エナンチオ選択性で得た。 3. 量子化学計算主導デザインによる脂肪族末端アルケンの不斉ヒドロホウ素化(Nature Commun. 2018, 9, 2290): 実験結果をもとに遷移状態を計算・解析し触媒の設計原理を抽出、さらに実験を繰り返すことで高い選択性、活性をもつ触媒のデザインに成功した。今回開発した触媒は、C1対称性をもつ「非対称稠密型触媒」であり、これまでの配位子設計手法では到達し得ない、独自の構造を持つ。 4. アシルボラン化合物の高効率合成法の開発(Angew. Chem. Int. Ed. 2019, Just Accepted): 5. メカノケミストリーによるホウ素化反応の開発 (Nature Commun. 2019, 10, 111; Chem. Eur. J. 2019, 25, 4654)
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