研究実績の概要 |
本研究の目的は、計算化学を援用することで、光学活性銅(I)触媒の合理的設計を行い、ロンドン分散力などの弱い相互作用をコントロールし、最終的には未踏の領域である「非対称稠密型触媒」を開発することである。本年度では、以下のような多大な成果を得た。 1. バックボーンにケイ素を導入することによるQuinoxP*タイプ配位子の性能向上(J. Am. Chem. Soc. 2021, 143, 641):QuinoxP*タイプ配位子のキノキサリンバックボーン骨格にシリル基を導入すると、シリル基とリン上の置換基との間の相互作用により、不斉配位子としての性能が向上した。不斉配位子の新しいデザインとして特徴のある結果が得られた。2. 光学活性銅(I)触媒によるケチミンの不斉ホウ素化 (ACS Catal. 2021, 11, 6733):光学活性NHC配位子を用いることにより、これまで達成されていなかった、ケチミンの銅(I)触媒による不斉ホウ素化を達成した。3. ジヒドロシランのジボロンによるホウ素化を経た官能性シリルボランの合成 (Chem. Sci. 2021, 12, 11799) ジヒドロシランのホウ素化に有効な触媒系を発見し、ヒドロシラン部位をもつシリルボランの合成に成功した。4. アレン・ジボロン・ハロゲン化アルキルの三成分カップリングによる多置換アリルホウ素化合物の合成法の開発 (J. Am. Chem. Soc. 2021, 143, 13865):銅(I)触媒による二置換アレンの位置選択的ホウ素化と続くアルキル化によって、多置換アリルホウ素化合物位置選択的かつ立体選択的に合成する方法を確立した。 5. メカノケミカル合成開発(Angew. Chem. Int. Ed. 2021, 60, 16003; Nature Commun. 2021, 12, 6691; ACS Catal. 2021, 11, 14803; ChemSusChem 2022, 15, e202102132; Chem. Sci. 2022, 13, 430)。去年度に引き続き、新たなメカノケミカル合成の開発に成功した。
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