研究課題/領域番号 |
18H03910
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大須賀 篤弘 京都大学, 理学研究科, 教授 (80127886)
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研究分担者 |
田中 隆行 京都大学, 理学研究科, 助教 (20705446)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ポルフィリン / ラジカル / アミニルラジカル / トリメチレンメタン / 強磁性体 / スピンクロスオーバー |
研究実績の概要 |
ポルフィリノイドがその広いパイ平面にスピンを非局在化させることで、周辺に存在するラジカルを安定化できることがわかってきた。この性質を利用して、ポルフィリンメゾオキシラジカルやアミニルラジカル、炭素ラジカルを安定化することができ新たな磁性材料としての可能性が拡がってきた。 そのさらなる展開として、有機強磁性体を志向した高スピン化合物や配位誘導スピンクロスオーバーについての研究を行なった。 トリメチレンメタン構造が周辺の3つのポルフィリンに挟まれて安定化された化合物を合成し、期待通りに強磁性的相互作用を示すトリプレットジラジカル種を合成した。また、ジ(ポルフィリニル)アミニルラジカルにおいて、メゾ位にペンタフルオロフェニル基を有するポルフィリンの中心のニッケルイオンに対し、ピリジンを配位させることでそれぞれのニッケルイオンをS=0からS=1の高スピン状態に変換し、アミニルラジカルとの相互作用でS=5/2の高スピン種が得られることを明らかにした。 さらに、アミニルラジカルのさらなる酸化により、ナイトレニウムイオン種さえも安定に単離ができることがわかった。これらは単結晶X線結晶構造解析によって同定し、磁気特性についてはESRスペクトルや温度可変磁化率測定によって明らかにした。 フェニレン架橋ポルフィリンメゾオキシラジカルダイマーやコロールラジカルダイマーなどのジラジカル種を解析し、スピン間相互作用について体系的な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
目的としていた高スピン種のみならず、ナイトレニウムイオンのような非常に不安定と考えられていた化合物さえもポルフィリンの安定化効果によって空気中で単離可能であることがわかり、当初の想定以上に安定化の効果が大きいことがわかってきた。また配位誘導スピンクロスオーバーのような錯体化学との効果的な組み合わせにより、S=5/2という高スピン状態を実現することができた。分子設計の指針はさらに拡張しており、今後も様々なラジカル化合物の安定化に期待ができる。
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今後の研究の推進方策 |
今回ナイトレニウムカチオンが得られたことで、それと等電子構造を有するカルベンの安定化にも挑戦したい。前駆体の合成方法は確立されており、有望である。そのほかにも種々のジラジカルやポリラジカルのスピン間相互作用について体系的理解を深めることで、開殻ポルフィリン化学を一層深く開拓したいと考えている。
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