研究課題
これまでに開拓してきた開殻系ポルフィリノイドの設計指針を拡張して、さらなる開殻系ポルフィリノイドの合成と物性解明を行った。主な成果として、1) 動的共有結合を有するクロリン二量体の合成と溶液中および固体中での構造変化、2) 一重項ジラジカル性を有するメゾメゾ結合コロール二量体の錯体化学と酸化反応、3) 安定な三重項ジラジカル性を有する縮環ポルフィリン二量体の合成と物性解明、4) プロペラ型縮環ポルフィリン三量体の合成・構造・キラル光学特性、について研究を纏めた。これらの研究から、ポルフィリン骨格の持つ高いラジカル安定化能力が示され、かつポルフィリンの環構造の変化は本質的に内在するラジカル性に影響を与えること、また外周部修飾によってラジカル間相互作用が変化し、溶液中の動的ふるまいや固体中での磁化率変化を引き起こすことが体系的に示された。このような知見はπ電子系化合物に基づく有機磁性体、特に大気下でも安定に取り扱える磁性材料の設計指針として有用であると考えられる。これらの研究から着想し、ポルフィリン以外のπ共役系化合物においても大気下で安定なラジカルカチオン分子の合成研究に展開した。テトラベンゾテトラアザ[8]サーキュレンは含窒素ナノグラフェン化合物であるが、適切に窒素上を置換した場合に一電子酸化によって発生したラジカルカチオン種が単離可能なほどに安定であることが明らかになった。このラジカルカチオン種は中性種に比べて1500nmも吸収長波長シフトし、赤外領域の光を吸収することがわかった。ポルフィリンと異なり分子間相互作用も強く、今後の開拓が期待される分子群である。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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