研究課題/領域番号 |
18H03912
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
火原 彰秀 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (30312995)
|
研究分担者 |
岡田 哲男 東京工業大学, 理学院, 教授 (20183030)
福山 真央 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (40754429)
石坂 昌司 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 教授 (80311520)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | エアロゾル / レーザー散乱 / 表面張力波 / 自発共鳴振動 |
研究実績の概要 |
本年度は、1.準弾性レーザー散乱(QELS)気液界面計測の確立と応用、2.時間分解測定について並行して研究を推進した。 1.準弾性レーザー散乱(QELS)気液界面計測の確立と応用では、まず基板上セシルドロップ計測法の検討を昨年度に引き続き行った。実試料分析を目指し、液滴生成器から基板上に接触角90~100度程度、径5~20ミクロン程度のセシル液滴を生成し、そのQELSスペクトルを計測する手法の確立を目指した。球形の自発共鳴振動は、半径の-1.5乗に比例することが分かっている。セシル液滴表面から得られた振動数スペクトルには、2つの強度の大きな共鳴ピークが得られた。そのピーク振動数の液滴系依存を解析したところ、径の-1.5乗に比例しており、表面張力波共鳴によるピークであることが示された。しかし、その振動数の絶対値は球形の理論から予想される値よりも1.5倍程度小さい値であった。補正係数を用いた表面張力測定では、水の表面張力値に十分近い値が得られた。この液滴に、リモニン蒸気と水蒸気を含む空気を接触させると、表面張力が低下した。この結果は、懸滴法の結果と一致した。 2.時間分解測定では、エアロゾルに高分子や生体分子が含まれる状況を想定してタンパク質の表面吸着測定を実証することとした。代表的なタンパク質として、ウシ血清アルブミン(BSA)の気液界面吸着現象を測定した。ここでは、水溶液を容易に置換できるようにするためウェル型マイクロ流体デバイスを実験に用いた。懸滴法によるBSA吸着は10時間程度かかっているのに対し、マイクロ流体中の界面では10分程度に平衡値に達している。0.1 uM BSA水溶液の時、表面圧が15 mN/mとなる結果は、懸滴法に一致していた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体計画のうち、準弾性レーザー散乱気液界面解析法については、実試料分析を試すところまで来ている。名古屋大学宇宙地球化学研究所持田陸宏教授から環境試料を入手済みであり、共同研究の準備が整った。少し発展した計測系の議論としては、持田教授の研究室で開発済みのフロー系計測装置との組合せが考えられる。そのため、飛行中のエアロゾルからの信号取得も一つの課題であるが、昨年までに開発した高速データ取得法と組み合わせることで期待以上の成果が出ることも期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
測定系の高精度化を引き続き進めつつ、環境試料の測定に入っていく。本研究で実現を目指す先端計測法と大気化学の融合分野での成果を第一の目標に研究を進めていく。時間分解測定では、短時間測定・長時間モニターと計測法としての発展に目処が立ったため、計測法としてのデモンストレーションを行い、成果発表の準備を行う。バイオ分野との融合では、リン脂質二重膜測定とタンパク質吸着測定を成果発表可能な段階まで高精度化していく。
|