研究課題/領域番号 |
18H03913
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
秋根 茂久 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 教授 (30323265)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | カゴ型分子 / 分子カプセル / 応答性分子 / 動的変換 / 包接化合物 / 分子認識 / ジスルフィド / コバルト |
研究実績の概要 |
カゴ型構造の分子は、外部から隔離された内部空間での機能や、内部空間への物質の取り込みの観点から、近年注目が集まっている。しかしながら、これまでに報告されているカゴ型分子の多くは、物質の取り込みや放出の速度がカゴ型骨格自体にもともと備わっている隙間の大きさによって決まっており、ゲストの出入りを任意のタイミングでコントロールする機構は未開拓であった。そこで本研究では、配位結合によってカゴ型骨格の開口部の「窓」部分に開閉機構を導入し、有機物を中心としたゲストの出入りのコントロールを目指すこととした。 これまでの検討により、クリプタンド型コバルト(III)三核錯体の開口部をジアミンの配位により効果的に閉じることができることを明らかにしているので、本年度は、一旦閉じた開口部を開くことができるかどうかについて検討を行った。開く機構として、ジスルフィドの交換反応に着目した。ジスルフィドはチオラートなどの求核剤存在下で結合が動的になること、すなわちS-S結合が可逆的に開裂・再結合を起こすことが知られている。カゴ型配位子にコバルトとシスタミンH2N(CH2)2SS(CH2)2NH2を導入することによって、開口部が閉じたカゴ型錯体を合成した。この錯体のセシウムイオン取り込みの速度について調べたところ、以前報告したヘキサンジアミンで開口部を閉じたカゴ型錯体と同様の取り込み抑制効果が見られた。このとき、50%の取り込みまでに要する時間は14hであったが、チオラートアニオンを共存させると取り込みが加速された。取り込み速度は14倍もの加速効果を示した。すなわち、チオラートを共存させてジスルフィド結合を動的にすることで、「開いた」カゴ型分子として振舞うホストに変換できたことが確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カゴ型分子の開閉機構の研究の一環としてジスルフィド の動的特性を用いた機構を開発し、実際にゲスト取り込み速度の制御に適用することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
研究初年度はコバルト三核メタロホストにジスルフィド を導入することで開閉機構を実現できた。本年度は、有機分子を包接できるサイズの新規なカゴ型分子として、各種クリプタンド型のホストを新たに設計・合成し、その開閉機構の創出について検討を行う。可逆な開閉機構については、配位結合によりフタ部位を開口部に連結する手法を用い、効果的なゲスト取り込み速度の制御を目指す。また、これと並行して、カリックスアレーンやシクロトリベラトリレンなどのお椀型の有機骨格を複数組み合わせた新規なカゴ型配位子を設計・合成する。得られた配位子を各種遷移金属イオンと錯形成させてカゴ型錯体に変換するとともに、各種ゲストの取り込み能や閉じ込め効果について評価する。
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