研究課題/領域番号 |
18H03914
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
棚瀬 知明 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (50207156)
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研究分担者 |
中島 隆行 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (80322676)
浦 康之 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (40335196)
中前 佳那子 奈良女子大学, 自然科学系, 助教 (20757231)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多核金属錯体 / ナノ分子 / 遷移金属 / 多座ホスフィン / 次元制御 / 分子性金属鎖 |
研究実績の概要 |
本年度は以下の項目について研究を行った。 (1)直鎖状及び分枝状多座ホスフィン配位子の合成:N原子で連結された直鎖状多座ホスフィンや分枝状多座ホスフィンを新たに合成した。特に,N原子で連結された直鎖状四座ホスフィン(dpmppaR, R = Ph)を合成し,ホモキラルなdpmppaPhにより支持された直鎖状Pd4核鎖の合成に成功し,さらに,一連のPd/Pt混合金属4核鎖(PtPd3, PtPd2Pt, Pt2Pd2, Pt2PdPt)を構築することで一次元合金金属鎖というこれまでにない新たな概念の分子素子を提案するに至った。(2)低原子価Pd, Pt分子ワイヤーの創成: キラルな直鎖状四座ホスフィンrac-dpmppmを用いたパラジウム分子ワイヤーの合成と自己不斉認識によるPd鎖の拡張として,rac-dpmppmをHPLCキラルカラムにより光学分割し,キラルなPd8核鎖を合成し単離することに成功した。また,meso-dpmppmを用いたPt10核錯体を合成しその構造を明らかにした。(3)閉殻金属を用いた環状クラスターの分子設計と光励起物性の発現:光学活性なdpmppmを用いて強い発光を示すAu(I)四核錯体の合成を行った。また,多座ホスフィンオキシドを用いることでランタニド2核錯体を合成し,円二色性スペクトルや円偏光発光について研究を行った。 (4)分枝状多座ホスフィンを用いた平面状低原子価クラスターの創成を目指し研究を行った。(5)かご状銅ヒドリド多核金属集合系を用いた貴金属代替材料の開発:かご状銅ヒドリド8,9及び16核錯体を合成しその構造や反応性を明らかにした。特に8核錯体は二酸化炭素の水素化を触媒することが明らかになった。また,ある種の銅ヒドリド6核錯体は,ギ酸の水素と二酸化炭素への分解反応を触媒することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
直鎖状4座ホスフィンmeso or rac-dpmppm (Ph2PCH2P(Ph)CH2P(Ph)CH2PPh2)を支持配位子としたPd8核金属鎖を合成と構造・物性を明らかにするとともに,高温で解離生成したPd4核フラグメントの自己キラル認識を経たPd8核鎖の自発的整列について詳細な研究を行った。さらに,rac-dpmppmをHPLCキラルカラムにより光学分割し,キラルなPd8核鎖 [Pd8(R,R-dpmppm)4(CH3CN)2](BF4)4 及び[Pd8(S,S-dpmppm)4(CH3CN)2](BF4)4 を合成し単離することに成功した。N原子を含む新奇多座ホスフィンの開発では,PNP架橋を有する多座ホスフィンとして,dpmppaR (R = Ph)を世界に先駆けて合成し,一連のPd/Pt混合金属4核鎖(Pd4, PtPd3, PtPd2Pt, Pt2Pd2, Pt2PdPt)を構築することで一次元合金金属鎖という新たな概念の分子素子を提案した(Chem. Eur. J. 2019, inside cover pictureに採択)。銅ヒドリドクラスターの研究では,二酸化炭素の水素化によるギ酸生成を触媒するクラスターや,ギ酸の水素と二酸化炭素への分解反応を触媒する銅多核種を開発した(論文投稿中)。これらは,水素を二次エネルギーとするシステムにおける安価な金属触媒系の構築という観点から重要な結果である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は計画どおり以下の項目について研究を進める。 (1)直鎖状及び分枝状多座ホスフィンや,N原子で連結された直鎖状多座ホスフィンや分枝状多座ホスフィンを新たに合成する。(2)低原子価Pd, Pt分子ワイヤーの創成:直鎖状PnL配位子 (n = 3-6)を用いて{Mn(PnL)2}xで示される直鎖状分子ワイヤーの合成を行い,光・電気化学特性と金属鎖に沿った伝導特性について分析を行う。また,立体異性体rac-dpmppmを用いることによりキラルなPd8核鎖を合成・拡張する。(3)閉殻金属を用いた環状クラスターの分子設計と光励起物性の発現:非配位リンを有する{Mn-1(PnL)2}モチーフの特徴を応用し,{Mn-1(PnL)2}ユニットをM’イオンで連結することにより,柔軟な環状の金属集合系[{Mn-1(PnL)2}M’]m (n = 4-6, m > 2)を系統的に合成する。特に,AuI (d10), RhI (d8)等の閉殻金属イオンを用い,MM発光を利用した機能付与を目指す。(4)分枝状多座ホスフィンを用いた平面状低原子価クラスターの創成:分枝状多座ホスフィンにより支持される{Mn(PnB)2}ユニットを基本骨格とした平面状低原子価金属クラスターの合成を目指す。金属としてはPt, Pd, Ni, Cuを用い,3点星形の{M4(P4B)2}を基本原料として各M3ポケットに3個の金属(M’)を挿入することにより,平面6角状ユニット{M4M’3(P4B)2}を創成する。(5)かご状銅ヒドリド多核金属集合系を用いた貴金属代替材料の開発:安価な卑金属である銅を用い,{Cun(PnL)}ユニットの還元的融合による銅ヒドリドかご型クラスターの合成を目指す。得られたかご状クラスターを用いて内部への水素吸蔵,小分子や金属原子の取り込みや,水素化触媒としての貴金属代替材料の創成を目指す。
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