研究課題
合成高分子におけるモノマー配列制御、とくに汎用性と多様性に富むビニルモノマーの高度な配列制御は、高分子化学における究極の課題である。本研究では、原子移動ラジカル付加反応によりビニルモノマーを1分子ずつ順番に付加させ定序配列オリゴマーを合成し、適切な重合法により高効率に連結させることで、周期配列構造を有するポリマーへ導くことを目的としている。オレフィンメタセシス重合による方法では、両末端に二重結合が導入された定序配列オリゴマーを合成し、非環状ジエンメタセシス重合と水素化により種々の配列制御ビニルポリマーを得た。スチレン、アクリル酸エステル、エチレン単位からなる配列制御ビニルポリマーのガラス転移温度(Tg)は、仮想的なランダム共重合体より20℃ほど高かった。さらに、スチレンとエチレン単位からなる配列制御ビニルポリマーは、ポリマーのTg以下に融点を示した。また、アクリル酸エステル部位に、水酸基、カルボン酸、アミノ塩酸塩が規則的に取り込まれた配列制御共重合体を合成し、高いTgと極性溶媒への溶解性を示すことを見出した。チオール・エン重付加による方法では、末端に二重結合とチオエステルが導入された定序配列オリゴマーを合成し、カテコールやアミノ塩酸塩が周期的に導入された配列制御ポリマーの合成に成功した。ポリマーのTgは、カテコールのみ、アミノ塩酸塩のみ、両方を有するものの順に高くなった。さらに、カテコールとアミノ塩酸塩が隣接して配列された共重合体は、離れて配列されたものよりも高いTgを示し、配列がポリマー物性に及ぼす影響が示された。また、ラジカル1,5-シフト重合による方法では、末端にビニル基と主鎖に不斉炭素を一つのみ有する光学活性定序配列オリゴマーを光学分割により単離し、これを重合することで主鎖のキラリティーに基づく光学活性配列制御ビニルポリマーの合成に初めて成功した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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