研究課題/領域番号 |
18H03918
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
関 修平 京都大学, 工学研究科, 教授 (30273709)
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研究分担者 |
櫻井 庸明 京都大学, 工学研究科, 助教 (50632907)
酒巻 大輔 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60722741)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | FI-TRMC / ESR / 界面 / マイクロ波 / 伝導度 / 移動度 / 骨格構造 / ポリアセチレン |
研究実績の概要 |
本研究の当初の目的は、TRMC@Interfaces/TRMC@Transformation/TRMC-ESR複合計測の3つの完全実験的計測法の確立であった。平成30年度は、大阪北部地震において本研究の基幹装置であるESRマグネットに故障が発生し、これを用いた実験を一時停止せざるを得なくなったため、科学研究費の繰越制度に基づいて、本研究目的4)伝導種・スピン状態と電子輸送特性の完全定量分析に対応する研究項目3-ESR-TRMC複合計測による伝導種と輸送能の相関解明を令和1年度に持ち越して実施した。ESR-TRMC複合計測において特に重要な開発要素であるTRMCのマイクロ波キャビティー中にスピン注入・電荷注入を効果的に行うための手法として、ヨウ素の気相拡散による計測対象材料への正孔ドープ・tetrakis(dimethylamino)ethylene(TDAE)の気相拡散・固体拡散による電子ドープ、双方の検討を行い、前者においては単純な気相拡散法が、後者においては積層膜構造形成による固体拡散法が、それぞれ有効なドープ手法として成立することを見出した。p/n型双方の分子製半導体材料として、π共役高分子およびナフタレンジイミド誘導体を用い、注入スピン数の絶対定量と同時に過渡伝導度信号の分析に成功した。 次いで界面伝導度計測法であるTRMC@Interfaces(FI-TRMC)法を用い、これらの材料中に電界印可によるキャリア注入を行い、特に共役高分子としてポリアセチレン誘導体およびポリベンゾジチオフェン誘導体、および発達した共役構造を有する2次元共有結合性フレームワーク分子(COF)の電子輸送特性の評価を行った。固体構造に比して、特にポリアセチレン誘導体が凝集過程における特異な骨格構造を発現することを見出し、これに対応した界面特異的な電子輸送特性を示すことを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
科学研究費繰り越し制度を活用した令和1年度の研究計画は、核心装置であるESR分光器の修理完了後、速やかに実験実施体制を構築することができたことから、およそ2か月で約半年間の遅れを取り戻すことができ、本年度の研究成果に記した研究項目3-ESR-TRMC複合計測による伝導種と輸送能の相関解明の構築についてほぼ完了することができた。のみならず、この計測法を用いて対象とした共役高分子をポリチオフェン系に加えてポリアセチレン系・BDT系、さらには2次元共役高分子に速やかに拡張することに成功し、これらの物質群から得られた伝導特性評価結果はすでに一部、学術誌に公表されている。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的1)共役高分子の界面構造と電子輸送特性の相関、研究目的2)共役高分子電子素子における支配因子の定量分析、研究目的3)骨格構造の変調と電子輸送特性の相関、に対応する界面選択的なFI-TRMC法について特に、その絶対定量特性を生かして積極的な国際共同研究として展開する。 研究目的4)伝導種・スピン状態と電子輸送特性の完全定量分析、については共役分子材料・開殻分子材料への展開を進め、電荷キャリアの輸送と合わせて、スピン角運動量の物質内輸送過程の解明手法としてのさらなる展開を行い、有機分子性材料をもとにしたElectronics/Spintronics特性の評価手法としての唯一無二の方法として確立する。
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