研究課題/領域番号 |
18H03921
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
西出 宏之 早稲田大学, 理工学術院, 特任研究教授 (90120930)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 機能性高分子 / レドックス反応 / 高分子物性 / 二次電池 / 水素キャリア |
研究実績の概要 |
レドックス高分子としてTEMPOポリマーを対象に、少量のカーボンナノチューブ・ネットワークとの複合電極を効率高く作動させるに成功し、他に類例のない1 A/cm2超の高い電流密度(既報値の100倍近い)と高い容量と3 mAh/cm2を実証した。親水性のTEMPOポリマーのナノ粒子、キノンポリマーナノ粒子の水分散液を正負極とする、高エネルギー密度でかつ環境適合なレドックスフロー電池をはじめて構成するとともに、ナノ粒子内での高密度電荷の交換(拡散係数として10-7 cm2/s)と貯蔵を解明した。極めて卑な電位をもつベンゾチオフェンスルホン高分子を合成し、これを負極、TEMPOポリマー正極の全有機電池で、2.6 V超の出力電圧と500 mWh/g超の高いエネルギー密度を明示した。親水性レドックス高分子、生理食塩水、生体適合性セパレータ・封止ポリマーから、厚み1μm以下のナノシート型の電池を作製し、電池性能とあわせ、数倍伸縮可能、皮膚付着性から、幅広い展開の可能性を示した。 水素の高密度授受については、コンパクト分子構造で密度高いポリビニルフルオレノンを設計・合成し、その電荷および水素(プロトン)の交換反応の解析に着手した。水分子の高分子内および界面での特性を前提として理解するため、汎用NMR法と(高分子のモデルとなる)疎水性分子の添加により、初めて水クラスターの立方8量体構造と水素結合の役割を、クラスター寿命、安定性、物性など含め定量的に明らかにした。あわせ高分子によるレドックス、水電解、光水分解に波及する全く新しい成果も得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りには進捗しており、論文発表8報(うちインパクトファクター10以上4報)も順調で、国際会議での基調・招待講演も含め国際的な関心も高い。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度の研究実施は次を計画している。 (1) レドックス高分子における電荷交換と大電流密度の実証 まずリチウムコバルトおよび鉄酸化物とレドックス高分子のハイブリットを結着性も活用して作製し、300 mAh/cm3以上のエネルギー密度を保持しながら、高い電流密度での高速充放電が両立した電池を実証する。TEMPOと対なし全有機電池として作動する、負極活性なレドックス高分子を継続して探索し、電荷輸送・貯蔵の特性を明らかにする。典・ウプサラ大と一部共同して高分子でのハイドロキノン/キノン間のレドックスにともなうプロトン移動に注目し、電荷輸送能と共役した過程として特徴づける。 (2) 水素の高密度授受と高分子型水素キャリア まずポリビニルフルオレノン微粒子を合成し、界面から高分子内部への水素の経時的な交換伝播と水素発生の定量的な解析をまとめ上げる。水素付加・脱離体をフルオレノンからキノキサリンなどの窒素複素環式化合物に拡張し、質量水素密度として有機ハイドライドと同程度の数wt%の水素キャリアとして試験する。エネルギー準位を調整したチオフェン共重合体による効率高い水電解・水分解にも波及する研究領域として踏み込む。なお平成31年度より、研究協力者として岡 弘樹(日本学術振興会 特別研究員)が参加する。
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