研究実績の概要 |
最終年度となった2021年度は、ジスチリルベンゼン(DSB)をπ共役コアとし、両フェニル末端に導入する分岐アルキル鎖の置換位置(2,4-、2,5-、2,6-、3,5-)および鎖長(C6C8、C8C12、C10C12、C12C14)を変化させ、分子構造と液体粘性の相関を見出すに至った。置換位置依存性では、2,5-または2,6-位に分岐アルキル鎖を導入することで低粘性液体を得た。しかしながら、2,6-置換の場合、分子の熱安定性が低く、合成時の収率も低く、2,5-置換の誘導体が最も光安定性が高いことから、2,5-置換のアルキル化DSB液体が最も低粘性液体材料として優れていると判断した。一方、アルキル鎖長の比較では、C10C14鎖が最も低い粘性を与え、近接するDSBユニット間のπ-π相互作用と分岐側鎖間のファンデルワールス相互作用のバランスによって、粘性が制御されていることが示唆された。同解析を進める中で、分子サイズ(GPC)、自由体積(陽電子消滅寿命測定)、分子運動性(固体NMR)などが複合的に液体粘性に寄与していることも理解するに至った。 また、昨年度より研究を展開しているアルキル化π共役分子液体の概念をπ共役ポリマーへ拡張した系では、ポリマー鎖の内側に配置するアルキル側鎖と外側に配置する側鎖の運動性の違い、π共役主鎖とアルキル側鎖の運動性の違いに関して、詳細なレオロジー測定を実施する事で、一部明らかにすることができた。 その他、様々なアルキル化π共役分子液体を基材にコロナ帯電処理後の表面電位を測定した結果、大きなπ骨格の液体において優れた帯電性を示すことを見出した。また、伸縮性振動デバイス素子を組立て、振動刺激に対する出力電圧特性を評価した。現在までに2 kV程度の出力を達成しており、液体ポルフィリン基材の伸縮性振動発電素子の性能と比較して約20倍もの性能向上に成功した。
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