研究課題/領域番号 |
18H03924
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大久保 將史 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (20453673)
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研究分担者 |
大谷 実 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究チーム長 (50334040)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナノシート / キャパシタ / 電池 |
研究実績の概要 |
本研究は、キャパシタの高エネルギー密度化を目指し、キャパシタンスを増大させる新指針として「電気二重層の誘電率制御」を提案する。対象として、MXene(マキシン)と総称される層状化合物に着目する。MXeneは、層間に挿入された溶媒和イオンが電気二重層を形成し、キャパシタ電極として機能する。 平成30年度において、Ti2CTx、Ti3C2Tx、Mo2CTxなど様々な組成を持つMXeneについて水系電解液での充電放電反応機構を調べたところ、ルイス酸性が強いカチオン種が水和された状態でMXene層間に閉じ込められ、電荷貯蔵を行うことが明らかとなった。更に、カチオン種のルイス酸性が強くなるほど水和水は強くナノ層間に閉じ込められ、電子とイオンが形成する電場は水の双極子分極と共鳴して過剰遮蔽を示すことが理論と実験の協業から明らかとなった。過剰遮蔽の結果、水分子は外部電場に対して負の誘電率を持つこととなり、高密度な電荷貯蔵を実現することに成功した。この結果はNature Communications誌に掲載され、プレスリリースを行った結果、化学工業日報1面に掲載された。 ルイス酸性が強いカチオンと共に閉じ込められた水分子の負の誘電応答を利用した高密度電荷貯蔵を更に拡張するために、電位窓が拡大する高濃度水系電解液とMXeneの組み合わせを行った。その結果、従来型の電解液と比較し、3倍のカチオンを充電することに成功し、大幅なエネルギー密度の増加を実現した。この特異的な高密度イオン貯蔵は、理論計算の結果でも証明された。特に、水和イオンはナノ空間に超高密度で閉じ込められており、更なる水和水の異常誘電応答が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
MXene層間に閉じ込められた水分子が負の誘電率を持ち、その異常誘電応答を利用することで1.7倍の電荷貯蔵を実現することに成功した。この結果はNature Communications誌に掲載され、プレスリリースを行った結果、化学工業日報1面に掲載された。更に、高濃度水系電解液とMXeneを組み合わせることで電荷貯蔵を更に3倍することにも成功しており、当初の計画を超える成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
MXene層間のイオン貯蔵について、水和水を用いた大幅な高密度化、高濃度水系電解液を用いた高密度化に成功しているが、一方で、高濃度電解液におけるカチオン-アニオン相関によるイオン易動度の低下が問題となっている。今後は、カチオン-アニオン相関を低減する方策を検討するとともに、MXene-高濃度電解液における律速段階を実験と理論の両面から追求し、その課題解決を図る。
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