研究課題/領域番号 |
18H03926
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
獨古 薫 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (70438117)
|
研究分担者 |
都築 誠二 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 上級主任研究員 (10357527)
梅林 泰宏 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90311836)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 電気化学 / イオン伝導 / 計算化学 / 電池 |
研究実績の概要 |
アルカリ金属塩高濃度電解液中におけるアルカリ金属イオンのホッピング伝導の発現および高速化には,塩濃度に加え,溶媒やアニオンの構造やサイズ,ルイス塩基性が重要なパラメータと考えられる。アルカリ金属塩のアニオン種と溶媒種を様々に変化させ,ホッピング伝導の発現要件を明らかにするとともに,分光学的手法により,溶媒和構造の解析を進め,分子動力学シミュレーションにより,溶液構造のダイナミックスとホッピング伝導機構を検証進めている。令和元年度は,スルホランなどのスルホン系溶媒,スクシノニトリルなどのジニトリル系溶媒を用いて,Li塩高濃度電解液を調製し,Liイオン輸送特性を磁場勾配NMRや電気化学的な手法により解析した。その結果,これらの高濃度電解液中では,Liイオンが溶媒やアニオンよりも速く拡散するホッピング伝導が発現することを確認した。溶液構造を分光学的手法により解析を進めたところ,これらの高濃度電解液中では,Liイオンとアニオンからなるイオン凝集体が発達していることがわかった。このイオン凝集体の構造の動的な変化とこれに伴うLiイオンの配位子交換によりホッピング伝導機構が発現するすると考えられる。また,NaN(SO2F)2/スルホラン混合電解液系の分子動力学シミュレーションにより,Na イオンの配位子の動径分布関数および配位数の解析を行い,高濃度領域ではスルホランの酸素だけでなく N(SO2F)2アニオンの酸素も Na イオンに配位すること,スルホランは主に単座で配位していることを明かにした。さらに,分子動力学シミュレーションによる電極近傍のイオン液体の液体構造の解析を行い,アニオンの違いにより電極に電荷を置いた場合に生じる charge-ordering 構造が大きく変化することを明かにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Li塩高濃度電解液中におけるLiイオンホッピング伝導に関して,これまでスルホランを溶媒に用いた高濃度電解液で発現することを確認していたが,当初の計画に従い,様々な溶媒を用いて検討を行った結果,スルホラン以外のスルホン系溶媒やジニトリル溶媒を用いた場合にもLiイオンホッピング伝導が発現することを確認した。また,Na塩高濃度電解液に関する検討も進めており,Li塩高濃度電解液と同様にNaイオンのホッピング伝導と思われる現象を確認している。分光学的手法による溶液構造の解析や分子動力学シミュレーションによるイオン伝導メカニズムの理解も順調に進んでおり,計画通りに研究が進捗している。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで,スルホランなどのスルホン系溶媒やジニトリル系溶媒を用いた電解液でホッピング伝導を確認しているが,プロピレンカーボネートやガンマブチロラクトンなどを溶媒に用いた濃厚電解液でのホッピング伝導に関しても解析を進める。 分光学的手法による溶液構造の解析では,Li塩/スルホラン混合溶液に関するスペシエーション分析と液体構造解析を完了しつつあるので,その他のアルカリ金属塩溶液に研究も進める。また,高濃度電解液の誘電緩和測定やNMRによる回転相関時間の定量解析を進める予定である。 さらに,分子動力学シミュレーションを用いてアルカリ金属塩高濃度電解液の液体構造,アルカリ金属イオンの配位構造の詳細を明らかにし,ホッピング伝導を可能にする要因の解明をめざす。また,界面の電荷移動に影響を与える電極界面の電解液の液体構造を明らかにするために,イオン液体の電極界面のシミュレーションに用いた手法を適用して,電極近傍のイオンの分布の解析を行う。 高濃度電解液の電気化学反応に関しては,リチウムイオン二次電池などで用いられるLiイオンの挿入・脱離が可能な遷移金属酸化物や炭素材料などの電極材料を用いて解析を行う。電極と高濃度電解液の界面でLiイオンインターカレーション反応が進行する際,Liイオンの脱溶媒和および接触イオン対が解離する過程が進行する。これが界面電荷移動反応速度に大きな影響を及ぼすと考えられ,電気化学インピーダンス法により高濃度電解液の組成が界面電荷移動反応速度に及ぼす影響を解析する。
|