研究課題
パラジウムによる迅速Alloc基除去と4-メルカプトフェニル酢酸の触媒毒効果を併用したワンポットNCLの開発は、タンパク質化学合成の収率を劇的に向上させた。我々の方法は一定時間ごとに順次パラジウム錯体とペプチドセグメントを加えていくだけで良い。ポイントは、Pd/TPPTS錯体によるCys末端からの迅速なAlloc除去と並行して、NCL活性化のために加えられた4-メルカプトフェニル酢酸によって緩やかにPd/TPPTS錯体の失活が進むことである。失活したパラジウムは反応系の外に追いやられるので、工程ごとに精製する必要がない。本法は、十分に効率的な合成法であり、実際にヒストンバリアントH2AXなどを合成することによって実証した。しかし、まだなおペプチドの2当量以上のPd/TPPTS錯体を各連結工程で追加投与する必要があり、錯体の使用を触媒量まで減らすことがコスト面での課題として残された。ワンポットNCLに最適な金属触媒を探索したところ、ルテニウム錯体[CpRu(allyl)(L)]PF6 (L = 4-dimethylaminoquinoline-2-carboxylate)が上記パラジウム錯体に代わって触媒的(0.2当量)に働くことを見つけ出した。このルテニウム錯体は、Alloc基の除去においてパラジウムの時の50倍の触媒活性を示し、5,000倍の4-メルカプトフェニル酢酸が混在しても触媒活性を維持し続ける。これを用いて、アセチル化、リン酸化、シトルリン化、ユビキチン化を含むヒストンH1.2(212アミノ酸長)やヘテロクロマチンタンパク質HP1a(191アミノ酸長)を効率的に合成し、これらの合成タンパク質におけるそれぞれのエピジェネティック修飾がDNAへの結合へ及ぼす効果を明らかにした。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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