研究実績の概要 |
2018年度は当初計画に従い、天然のRNAと直交しているD-aTNAのみを使用して、D-aTNA入力で蛍光シグナルを増幅して出力する増幅回路を設計した。ここではPierceらが報告した増幅回路Hybridization Chain Reaction (HCR:, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2004, 101, 15275-15278)を応用し、SNAをインターフェースに使用してmiRNA入力で出力されるD-aTNAで起動するという前提で、D-aTNAのみでHCR増幅回路を設計した。標的としてmiR21を想定し、miR21の2/3の配列長のD-aTNAでHCR型シグナル増幅回路を設計した。 HCR回路は、二種類のヘアピン鎖(HP1, HP2)とInput鎖(SNAインターフェースを通じて出力されるD-aTNA)で構成される。Input鎖が不在の場合、二つのヘアピンは互いに相互作用せず閉じた状態を保つが、Input鎖を添加すると、HP1のToehldとInput鎖の結合を介した鎖交換反応により、まずHP1が開く。開いたHP1がHP2と結合することで、HP2が開く。開いたHP2は更にHP1と結合することができるため、カスケード的に反応が進行する。そこでモレキュラービーコンの様な蛍光色素(Cy3)と消光色素(Nitromethyl Red)の対をステムに導入したHP1を合成し、種々の配列で検討を行った結果、Input非存在下では蛍光増幅しなかったのに対し、37℃で増幅反応が進行するHP1とHP2の組み合わせが得られた。この組み合わせに対し、増幅回路の0.1等量のInput(D-aTNA)を加えたところ、7倍程度のシグナル増幅が観測された。このように、D-aTNAでもDNAと全く同様にHCR回路が設計できることを明らかにした。
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