研究課題/領域番号 |
18H03934
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
跡見 晴幸 京都大学, 工学研究科, 教授 (90243047)
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研究分担者 |
真鍋 良幸 大阪大学, 理学研究科, 助教 (00632093)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アーキア / 始原細菌 / 代謝 / 生合成 / ゲノム |
研究実績の概要 |
本年度は主に、coenzyme A(CoA)、lipoic acid、cysteine、ethylene glycol、aspartate、pyruvateの生成に関わる酵素、代謝経路の同定を目指した。CoA、lipoic acid、aspartate、pyruvateについては超好熱性アーキアThermococcus kodakarensisを、cysteineについては、超好熱性のCrenarchaeotaを、ethylene glycolについては好塩性アーキアを用いて解析を行った。CoAの研究では生合成経路の最終段階を触媒する酵素dephospho-CoA kinase(DPCK)の遺伝学的解析を中心に進め、遺伝子破壊株に種々の変異体DPCK遺伝子を導入することにより、活性に重要なアミノ酸残基を特定した。Lipoic acidについては硫黄原子を導入する酵素およびlipoic acidあるいはoctanoic acidのglycine cleavage system H-proteinへの結合を触媒する酵素の遺伝子発現と組換え型酵素の精製を進めた。必要な場合には活性型酵素に含まれる鉄硫黄クラスターの再構成を行った。Cysteineについては複数のCrenarchaeonからのserineのリン酸化を触媒するserine kinaseについて、酵素学的特性を明らかにした。Ethylene glycolについては、好塩性アーキアHalobacterium salinarumの無細胞抽出液からglycol aldehyde dehydrogenase/reductaseを精製し、機能解析を通じて酵素学的特性を解明した。Aspartateについてはasparagineのアミド結合加水分解酵素の遺伝子発現と組換え型酵素の精製を進めた。Pyruvateについては、中央代謝に導入される炭素源の検討を行い、ATP依存的にglucoseをリン酸化する酵素活性が検出された。これは既に同定されているADP依存的活性とは異なるタンパク質に由来することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CoA生合成経路の全容解明がほぼ達成でき、またlipoic acid生合成に関与する新しい候補遺伝子が同定できた。好塩菌においてはnucleoside代謝系における新たな下流酵素の遺伝子が同定できた。以上のことから本研究の進捗状況は概ね良好であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Coenzyme A生合成経路の最終段階の反応を触媒するdephospho-CoA kinase(DPCK)をコードする候補遺伝子が特定できたので、前年度に引き続き遺伝学的解析・相補実験を進める。DPCK遺伝子破壊株に野生型DPCK遺伝子をin transに導入しても遺伝子破壊株の表現型(CoA要求性)が完全に相補されなかったことから、遺伝子破壊が周辺遺伝子の発現に影響を与えた可能性があるので、この点を検討する。DPCK homologでありながらDPCK活性を示さなかった遺伝子についても機能解析を続ける。Lipoic acidの生合成に関与する可能性のある遺伝子を複数同定しているので、これらの機能解析についても優先的に進める。Crenarchaeota由来serine kinaseについても生化学的解析を進め、リン酸基供与体に対する特異性を中心に、酵素学的特性を明らかにする。上記以外に、asparagine/aspartate、glutamate、D-体アミノ酸などアミノ酸の代謝や葉酸、NAD/NADPなど補酵素の代謝について未同定酵素・代謝経路の同定を目指す。また上記の微生物以外の始原微生物を対象とした解析も進める。また光呼吸経路に類似した代謝経路がアーキアに存在する可能性があり、その検証を進める。さらに芳香族アミノ酸生合成、asparagine/aspartate変換、compatible solute生合成の制御機構の解明を目指す。一方で、アーキアを対象にタンパク質修飾糖鎖、菌体外多糖(EPS)などを分離し、それらの構造およびそれらを構成する単糖類の同定を引き続き目指す。まずアーキアから細胞表層タンパク質を抽出する。続いてこれらから翻訳後修飾糖鎖を酵素的・化学的に遊離させる。糖鎖が得られた場合にLC-MS/MS、NMR解析を進め、それらの構造を明らかにする。
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