研究課題/領域番号 |
18H03935
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
菊地 和也 大阪大学, 工学研究科, 教授 (70292951)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 蛋白質ラベル化 / 化学プローブ / GLUT4 / 膜蛋白質 |
研究実績の概要 |
GLUT4はⅡ型糖尿病の発症に関わる膜蛋白質であり、以前の研究で我々はその糖鎖修飾による細胞膜滞在時間の差をイメージングによって示してきた。この細胞膜への滞在時間の差には糖鎖修飾した蛋白質と何らかの分子との間に相互作用が働くと考え、本年度は、GLUT4近傍の分子を架橋する「光でつなぐ分子」の開発を進めた。戦略として、GLUT4の細胞外に局在するループ部分にタグ蛋白質として用いてきたPYPを融合発現し、PYPタグリガンドに光反応性の架橋剤を連結した化学プローブを設計・合成した。細胞膜透過性とPYPに対するラベル化反応を観察するため、化学プローブには蛍光性のクマリンをリガンド部分として導入した。光架橋部位の検討を行い、Trifluoromethyl-phenyldiazirineを有する化合物が、副反応を抑えつつ効率よく光架橋反応を引き起こすことが明らかとなった。また、プローブがPYPをラベル化できるかどうかをSDS-PAGE解析によって確認した。次に、培養細胞にPYP-GLUT4を発現させ、プローブの標的膜蛋白質に対するラベル化を評価した。プローブ処理後、クマリン由来の蛍光シグナルが細胞膜上からPYP-GLUT4を発現させた細胞から特異的に観察された。この結果から、細胞実験においてもPYPタグ特異的にプローブが反応していることが明らかとなった。さらに、ラベル化反応を行った後の細胞にUV光を照射し、光架橋反応を行い、細胞を破砕しPYPタグと架橋した蛋白質を分離し、SDS-PAGE解析を行った。その結果、複数の位置から蛋白質由来のバンドが確認された。今後これらの蛋白質の同定を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現状、目的とした化学プローブの合成は完了しており、標的とした膜蛋白質のラベル化、および光クロスリンク反応の性質も確かめられたことから、おおむね順調に進行しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、PYP-GLUT4を脂肪細胞3T3-L1に発現させ、インスリン添加後、プローブでラベル化し光照射する。その後、界面活性剤で可溶化しPYP-GLUT4を免疫沈降し相互作用している糖鎖結合分子を濃縮し、免疫沈降ビーズより解離させた蛋白質をSDS-PAGEで解析を行う。合わせて、個体への応用を目指し、近赤外蛍光色素でラベル化可能な蛋白質ラベル化プローブの開発に着手する。 また、もう一つのラベル化法であるBLタグシステムを用いた、膜蛋白質の動態解析を行う。自然免疫系に関与する膜蛋白質、Toll様受容体4(TLR4)とそのアダプター蛋白質(TIRAP)をそれぞれ近赤外と赤色の蛍光色素で染め分け、リガンド刺激に対する蛋白質相互作用の1分子解析を行う。
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