研究課題/領域番号 |
18H03937
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大利 徹 北海道大学, 工学研究院, 教授 (70264679)
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研究分担者 |
森田 洋行 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (20416663)
濱野 吉十 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (50372834)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ペプチドエピメラーゼ / ペプチドグリカン / ラッソペプチド / ポリグルタミン酸 |
研究実績の概要 |
以下の3つのペプチド新規異性化酵素について詳細な解析を行った。 ①微生物のペプチドグリカンの生合成に関与する新規エピメラーゼ(XOO_1319); UDP-MurNAc-L-Ala-L-Gluの末端のL-Gluのエピメリ化を触媒するXOO_1319は、基質をアデニル化により活性化する。α位のカルボニル基がアデニル化されることを証明するため、反応液に15Nヒドロキシルアミンを添加し生成物を精製後、NMR解析した。その結果、予想通りα位にヒドロキサム酸の存在が確認できた。しかしエピメリ化の反応機構解明のため結晶構造の解析も予定していたが、長期間の施設閉鎖のため実施できなかった。 ②リボソームにより合成されるラッソペプチド(MS-271);昨年度までに、大腸菌異種宿主発現系を用いin vivo解析した結果、プレカーサーペプチド、エピメリ化酵素、リーダーペプチド認識酵素の3遺伝子導入で、C末端のTrp の異性化反応が確認できている。今年度、上記3つの組換え酵素を用いてin vitro解析した結果、基質の50%が異性化した。なおコアペプチドを基質に用いた場合は、ほとんど異性化は進行しなかった。したがって、異性化反応にはリーダーペプチドが必須であることが分かった。 ③ポリグルタミン酸(PGA)生合成におけるエピメリ化酵素;昨年度までに、PGAに含まれるD-グルタミン酸(D-Glu)は伸長鎖長にL-Gluが取り込まれた後にエピメリ化されて生成することを同位体標識実験で証明した。今年度、3つの酵素複合体であるPGA合成酵素(PgsABC)のいずれがエピメリ化に関与するか調べるため、100%と60%のD-Glu含有PGAを生成する2種類の酵素を用いて各PgsABC酵素を交換し生成PGAのD-Glu含有率を調べた。その結果、多くの組合せで生産性が消失したが、PgsAがD-Glu含有率を決定していることを示唆する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
お互いに相同性のない複数の新規ペプチドエピメラーゼを見出し、ペプチドグリカン生合成に関与するエピメラーゼとMS-271の生合成に関与するエピメラーゼに関しては、in vitroでの活性検出に成功した。しかし、両者ともに反応機構解明のためには結晶構造解析と変異酵素を用いた解析が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
ペプチドグリカンの生合成に関与する新規エピメラーゼとラッソペプチドの異性化に関与する酵素は、反応中間体ミミックとの共結晶化と結晶構造解析により反応機構を推定する。さらに変異酵素を用いた実証実験を行う。
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