• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2019 年度 実績報告書

酵素複合体メタボロン研究の新展開:酵素群の膜上提示技術がもたらすブレークスルー

研究課題

研究課題/領域番号 18H03938
研究機関東北大学

研究代表者

中山 亨  東北大学, 工学研究科, 教授 (80268523)

研究分担者 黒田 俊一  大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (60263406)
山下 哲  金沢大学, 物質化学系, 准教授 (70361186)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードカルコン合成酵素 / カルコン異性化酵素 / カルコン異性化酵素類似タンパク質 / メタボロン / フラボノイド
研究実績の概要

既往のフラボノイド酵素を用いたメタボロンの再構成を実施する過程で,当初想定していなかった新規 タンパク質(CHIL)が,メタボロン形成の核となるシトク ロムP450に強く結合することが判明したため,同タンパク質の詳細な解析を行った.まず,キンギョソウやダイズにおいて,CHILがフラボノイドメタボロンの構成要素となっていることを確かめた.次に,CHILがフラボノイドメタボロンのなかでどの酵素と相互作用するのかを網羅的に調べた.その結果,CHILはCHSやシトクロムP450(キンギョソウではII型フラボン合成酵素,ダイズではイソフラボン合成酵素)と相互作用することがわかった.CHSとCHILはすべての陸上植物に普遍的に存在するので,CHSとCHILの間の相互作用も同様に陸上植物に普遍的にみられるかどうかを調べたところ,コケ植物から被子植物にいたる調べたすべての陸上植物種において, CHILはCHSと相互作用できることがわかった.CHS活性に及ぼすCHIL結合の影響も調べた.CHSはカルコンの他に,副成物としてBNY,CTALのようなラクトンやスティルべンを生成しうる.実験に用いられた反応条件下ではCTALがおもな副成物であり,生成物のモル比(THC:CTAL)は,例えばキンギョソウのCHSでは4:6,ヒメツリガネゴケ(コケ植物)のCHSでは1:9であった.これに対してCHILの存在下では,CHS反応の生成物比はいずれの植物の場合でも9:1となった.調べた他の陸上植物においても同様に,CHILの存在下において,CHS反応の副生成物の量が減少しTHCの生成量の増大がもたらされた.以上のことから,CHILはCHSのあいまいな生成物特異性を矯正し,副成物の生成を抑制してもっぱらTHCを生成する役割を担い,しかもその役割は陸上植物において普遍的に保存されていることがわかった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究の過程で発見したCHILは,メタボロンの再構成の検討に極めて有用かつ不可欠なため,同タンパク質の詳細な解析タスク を追加して実施する必要が生じ,当初の計画を変更して本研究を推進した.その結果,上述のように非常に有益が得られ,当初の計画では予期し得なかった,計画以上の成果が得られている.

今後の研究の推進方策

今回得られた新知見を踏まえ,変更後の計画に基づいてメタボロン形成のキネティクス解析と構造解析を推進していく.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] A conserved strategy of chalcone isomerase-like protein to rectify promiscuous chalcone synthase specificity2020

    • 著者名/発表者名
      T. Waki, R. Mameda, T. Nakano, S. Yamada, M. Terashita, K. Ito, N. Tenma, Y. Li, N. Fujino, K. Uno, S. Yamashita, Y. Aoki, K. Denessiouk, Y. Kawai, S. Sugawara, K. Saito, K. Yonekura-Sakakibara, Y. Morita, A. Hoshino, S. Takahashi & T. Nakayama
    • 雑誌名

      NATURE COMMUNICATIONS

      巻: 11 ページ: 870

    • DOI

      10.1038/s41467-020-14558-9

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Managing enzyme promiscuity in plant specialized metabolism: A lesson from flavonoid biosynthesis2020

    • 著者名/発表者名
      Toshiyuki Waki, Seiji Takahashi, Toru Nakayama
    • 雑誌名

      BioEssays

      巻: NA ページ: e2000164

    • DOI

      10.1002/bies.202000164

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 酵素の特異性のあいまいさと植物特化代謝の進化: フラボノイド生合成から示唆されること 特異性を矯正する影武者タンパク質の発見2020

    • 著者名/発表者名
      中山 亨,高橋征司,和氣駿之
    • 雑誌名

      化学と生物

      巻: 58 ページ: 354-361

    • 査読あり
  • [雑誌論文] タンパク質間相互作用によるフラボノイド生合成酵素の活性制御: カルコン合成酵素の特異性あいまいさの矯正2020

    • 著者名/発表者名
      和氣駿之、高橋征司、中山 亨
    • 雑誌名

      酵素工学ニュース

      巻: 84 ページ: 27-31

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi