研究課題
硝酸イオンが直接、結合して活性化するNLP転写因子は硝酸シグナル受容体として機能し、活性化型となったNLP転写因子は硝酸還元酵素遺伝子や亜硝酸還元酵素遺伝子などの窒素同化関連遺伝子の近傍に結合して、これら遺伝子の発現を促進していることを明らかしてきた。さらに、NLP転写因子は転写因子遺伝子の発現制御を行うことで転写カスケードを形成し、複雑な硝酸シグナル応答を生み出していると予想してきた。NLP転写因子はNIGT1転写抑制因子遺伝子の発現を促進することや、NLP転写因子とNIGT1転写抑制因子はしばしば同じ遺伝子を標的遺伝子とすることを示しており、実際、時間差をおいて生み出される、NLP転写因子の転写促進効果とNIGT1転写因子による転写抑制効果のバランスによって、NRT2.1硝酸輸送体遺伝子などの発現が窒素栄養環境の変動に応じて調節されていることを示している。今年度は、NIGT1がDof1.7転写因子遺伝子の発現を促進し、Dof1.7はNRT2.5硝酸輸送体遺伝子の発現を促進することを明らかにした。従って、硝酸シグナルは3つのルートによって異なる硝酸輸送体遺伝子の発現を制御していることを明らかにした。NRT2.1遺伝子は硝酸イオン-NLPルートと硝酸イオン-NIGT1ルートによって制御される一方で、窒素飢餓応答遺伝子であるNRT2.4遺伝子の発現は硝酸イオン-NIGT1ルートによってのみ制御されている。これに加え、同じく窒素飢餓応答遺伝子であるNRT2.5遺伝子の発現は、硝酸イオン-NIGT1ルートと硝酸イオン-NIGT1-Dof1.7ルートによって制御されることで、窒素飢餓時にNRT2.5遺伝子の発現がより強化されていることを明らかにした。このような研究成果により、複数の硝酸シグナル伝達経路が存在することで植物の硝酸態窒素の獲得が巧妙に制御されていることが示された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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