研究課題/領域番号 |
18H03942
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
安藤 弘宗 岐阜大学, 研究推進・社会連携機構, 教授 (20372518)
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研究分担者 |
鈴木 健一 岐阜大学, 研究推進・社会連携機構, 教授 (50423059)
矢木 宏和 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 講師 (70565423)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 細胞膜ドメイン / スフィンゴ糖脂質 / ガングリオシド / 脂質ラフト |
研究実績の概要 |
1.ガングリオシドとの相互作用に基づいた脂質ラフト親和性蛋白質の同定 昨年度合成を完了した蛍光―光親和性GM3プローブ、光親和性GM1プローブならびビオチン化―光親和性GM3プローブを用いて、同一細胞膜上で相互作用する蛋白質の同定を実施した。これにより、GM3、GM1特異的に相互作用する蛋白質の候補を数種見出すことが出来た。これに関しては、今後詳細な検討を進めていく。また、iPS細胞抗原糖鎖として知られているグロボ系糖脂質(SSEA-3,4)の蛍光プローブの合成を完了した。生物物理学的評価(非イオン性界面活性剤不溶相分配試験、液体秩序相ー液体非秩序相分配試験)により、これらは他の天然ガングリオシドと同様にラフト親和性を保持していることが明らかとなった。 2.ガングリオシドによるホモリティックな糖脂質ドメイン形成の普遍性および形成因の解明 上述のSSEA-3,4の蛍光プローブを用いて生細胞膜上でのホモダイマー形成を1分子イメージングにより観測したところ、ガングリオ系列と同様に有意にホモダイマーを形成することが明らかとなった。また、ホモダイマーの寿命は糖鎖構造により違いがみられた。さらに、新たにジシアル酸残基を有するガングリオシドGD3、GD1b、GT1b、GQ1bの蛍光プローブの合成も完了し、それぞれが同様にホモダイマーを有意に形成することを見出した。特にシアル酸残基の数によりホモダイマーの寿命が大きく変化することが、これまでのシアル酸1残基含有ガングリオ系ガングリオシド(GM3,GM2,GM1)とアシアロ系ガングリオシドの比較により明らかとなった。これらのホモダイマーの形成因を明らかにするために、昨年度合成した天然のラクトシルセラミド(LacCer)のラクトース部分の鏡像異性体を含むL-LacCerと天然のLacCerのヘテロダイマーの形成時間を観測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、糖脂質プローブの合成とラフト親和性評価が進行している。また、今年度の目標であった光親和性ガングリオシドプローブによるガングリオシド標的タンパク質の同定にも着手でき、一定の成果が得られている。ホモダイマー形成因の解明では、1分子イメージングによる各プローブを用いたホモダイマー形成時間の測定が順調に進行しており、糖鎖部分の鏡像異性体のプローブによるヘテロダイマー形成の観測にも成功した。以上のことから、本年度の目的はほぼ達成しており、順調な進展と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
1.ガングリオシドとの相互作用に基づいた脂質ラフト親和性蛋白質の同定 本研究によって開発した光親和性GM3プローブを用いた、GM3が標的とする細胞膜タンパク質の同定を引き続き実施する(安藤、鈴木、矢木)。また、非特異的なタンパク質との結合の抑制と質量分析による糖鎖―タンパク質複合体の目印となる新たな光応答性官能基を開発し、タンパク質同定への応用を試みる。前年度に合成完了したヒトiPS細胞抗原SSEA-3,4の光親和性プローブを用いたiPS細胞膜上でのドメイン形成について 、1分子イメージングによる動態解析を行う(安藤、鈴木)。その後、光架橋実験により標的蛋白質を同定する。 2.ガングリオシドによるホモリティックな糖脂質ドメイン形成の普遍性および形成因の解明 期間全体で合成を計画している10種の蛍光プローブの内、本年度は4種の合成を完了する(安藤)。前年度で合成した蛍光プローブを用いた1分子イメージングにより、ホモダイマー形成能を検証する。また、脂質部分の構造を改変したGM3蛍光プローブ、シアル酸部の構造を改変したGM3プローブの合成を開始し、年度内に計四種のGM3構造改変プローブの合成を達成し(安藤)、随時、1分子イメージングにより動態解析を進め る(鈴木)
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