研究課題
前年度に引き続き、記憶想起に対するcAMP情報伝達経路の役割を解析した。光感受性cAMP産生酵素あるいは分解酵素をアデノ随伴ウイルスにより海馬に発現させる光遺伝学的解析、また、cAMP産生酵素あるいは分解酵素に対する阻害剤を投与する薬理学的解析を条件づけ文脈課題及び受動的回避反応課題を用いて実施し、cAMP情報伝達経路が記憶想起を正に制御することを明らかにした。さらに、興味深いことに、cAMP情報伝達経路は記憶再固定化も正に制御することを明らかにした。さらに、記憶想起制御に関わる新たな栄養素・食品成分の検索を試みた。cAMP情報伝達経路を活性化させる栄養素として必須アミノ酸ヒスチジンを想定し、ヒスチジン投与の影響を解析した結果、ヒスチジンが社会的認知記憶課題における記憶想起を改善することが示され、ヒスチジンが記憶想起障害を改善させる栄養素として機能することが示唆された。以上の結果から、cAMP情報伝達経路の活性化を導くことで、記憶想起障害を改善させることが示された。さらに、想起障害を改善させる栄養素・食品成分の同定も進んだ。また、データベースを用いた解析から、アルツハイマー型認知症患者の死後脳において、cAMP情報伝達経路の因子群と時計遺伝子群の発現異常も観察されたことから、時計遺伝子の変異と認知症との関係性の解析を進めた。社会的認知記憶課題を用いて、海馬にAβを注入したアルツハイマー型認知症モデルマウスの記憶能力を記憶想起障害の観点から解析した結果、このモデルマウスではBMAL1変異マウスと同様に明期開始後4時間(ZT4)では記憶想起が認められたが、明期開始後10時間(ZT10)で評価した場合には想起は認めらなかった。従って、BMAL1マウスとアルツハイマー型認知症モデルマウスの相同性が示唆された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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