研究課題/領域番号 |
18H03945
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
長田 裕之 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 副センター長 (80160836)
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研究分担者 |
永野 真吾 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (60286440)
本山 高幸 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 専任研究員 (70291094)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 植物病原菌 / 共生 / 二次代謝産物 / かび毒 / 生合成メカニズム |
研究実績の概要 |
テヌアゾン酸をどのように作るのかに関しては、独自に見いだしたユニークな生合成酵素TAS1について、立体構造解析に基づく触媒メカニズム解明を目指している。TAS1のKS(ketosynthase)ドメインは、他のKSドメインとは異なる特異的な配列を持ち、鍵となるディークマン環化反応を触媒することを我々は見いだしている。この反応のメカニズムを明らかにするため既に取得していたKSドメインの結晶を用いてX線結晶構造解析を行い、基質非結合型の構造を決定した。更に、構造情報を基に変異酵素を作製し、ディークマン環化反応に関与するアミノ酸の候補を見出した。テヌアゾン酸をいつ作るのかに関しては、テヌアゾン酸の生産制御メカニズムを明らかにし、テヌアゾン酸の生理的役割の解明につなげることを目指している。既に天然化合物ライブラリーから取得していたテヌアゾン酸生産誘導化合物がメラニンの生産を抑制することから、二次代謝の制御化合物であることを見出した。また、イネいもち病菌以外でも二次代謝の制御活性を持つことを見出し、二次代謝制御の一般性が示唆された。テヌアゾン酸をなぜ作るのかについては、テヌアゾン酸の標的生物に対する生物活性を明らかにすることを目指している。イネいもち病菌のTAS1の常時発現株では、ジャスモン酸の情報伝達系が誘導され、病原性が低下することを見出している。イネいもち病菌のイネへの感染におけるテヌアゾン酸の機能について明らかにするため、テヌアゾン酸を大量生産するイネいもち病菌を接種した際のイネ側の遺伝子発現変化をRNA-seqにより網羅的に解析し、ジャスモン酸の情報伝達系の活性化と、サリチル酸の情報伝達系の抑制が起こっていることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テヌアゾン酸の生合成メカニズムの解析に関しては、取得していたTAS1のKSドメインの結晶から、基質非結合型の構造決定に成功した。更に、構造情報を基に変異酵素を作製し、ディークマン環化反応に関与するアミノ酸の候補を見出した。テヌアゾン酸の発現制御メカニズムの解析に関しては、テヌアゾン酸生産誘導化合物がメラニンの生産を抑制することから、二次代謝の制御化合物であることを見出した。また、イネいもち病菌以外でも二次代謝の制御活性を持つことを見出し、二次代謝制御の一般性を示唆した。テヌアゾン酸の標的生物に対する生物活性に関しては、テヌアゾン酸を大量生産するイネいもち病菌を接種した際のイネ側の遺伝子発現変化をRNA-seqにより網羅的に解析し、ジャスモン酸の情報伝達系の活性化と、サリチル酸の情報伝達系の抑制を支持するデータを得た。以上のように、おおむね順調に研究が進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
テヌアゾン酸の生合成メカニズムの解析に関しては、構造情報をもとにした変異酵素作製等による反応メカニズムの解析を継続するとともに、ドッキングシミュレーション等による反応メカニズムの解析を進める。また、TAS1ホモログが生産する化合物の構造を明らかにするとともに、生合成メカニズムの解析を進める。テヌアゾン酸の発現制御メカニズムの解析に関しては、テヌアゾン酸生産誘導化合物により発現誘導される遺伝子クラスターを解析し、発現誘導に関与する因子を探索する。また、ケミカルバイオロジー的手法で標的タンパク質を探索する。テヌアゾン酸の標的生物に対する生物活性に関しては、イネいもち病菌のイネへの感染におけるテヌアゾン酸の役割について解析を進める。また、TAS1と同様に感染後期に発現誘導されるイネいもち病菌の二次代謝遺伝子の病原性への関与、及びTAS1との関連を解析する。更に、TAS1ホモログが生産する化合物の様々な生物に対する増殖阻害活性を解析する。
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