イネの開花期制御の気温応答性を明らかにするために、本州が栽培域のイネ品種日本晴と北海道が栽培域であるイネ品種ほしのゆめ、加えて、開花期制御遺伝子であるGhd7とHd1の准同質置換系統群を、短日高温区、長日高温区、短日低温区、長日低温区で栽培し、開花期を調査した。その結果、低温区で、全て実験区で、開花が遅れることに加えて、低温区では、短日と長日での開花日に大きな差があることを発見した。つまり、イネの光周性は低温で、増強されることが明らかとなった。また、准同質置換系統の結果より、光周性の低温増強は、Ghd7遺伝子とHd1の両方が必要であることがわかり、それにより、フロリゲン遺伝子であるHd3aやRFT1の遺伝子が低温区で非常に強く抑制を受けることが明らかとなった。この気温変化を伝える気温センサーとして、数年前に、シロイヌナズナで報告があるフィトクロムB遺伝子の影響を調べたところ、フィトクロムがGhd7のフロリゲン抑制活性を転写後に制御してることが明らかになった。加えて、Ghd7遺伝子が、光パルスで誘導がかかることから、その後のmRNAの経時的変動を解析したところ、Ghd7mRNAは高温で不安定になり、その結果、RFT1の発現が低温で湯徳抑制されることを示す結果を得た。しかしながら、この不安定性は、フィトクロムB遺伝子の変異体でも観察されることから、分子機構が異なる気温応答性がイネには存在し、フロリゲン遺伝子を制御していることが明らかになった。 また、今回の解析から、遺伝学的にはフロリゲンの上流に位置するEhd1やGhd7の転写も気温応答するが必ずしも開花期への影響と整合性が取れないケースがあり、開花期制御と気温応答性を理解するには慎重な解析が必要であることが明らかになった。
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