研究課題/領域番号 |
18H03950
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
白武 勝裕 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (90303586)
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研究分担者 |
野田口 理孝 名古屋大学, 高等研究院(農), 助教 (00647927)
青木 考 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (30344021)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 接ぎ木 / 寄生植物 / ケミカルスクリーニング / 接ぎ木調節化合物 / 接ぎ木和合・不和合機構 |
研究実績の概要 |
接ぎ木の接合を調節する化合物をケミカルライブラリーからスクリーニングするための実験系を確立した.in vitro grafting法と呼ばれる切断した茎二片を張り合わせて接ぎ木する手法を効率化するため,複数のウェルを持つシャーレに適合した専用のマイクロセルシートを作製し,少量のケミカルに対して用いて効率よく効果を評価する系を確立した.培養方法についても検討し,少ないスペースで最密充填できるような配置とした.植物材料は,茎の形状が均一で,種子の発芽後に比較的すぐに茎が伸長するマメ科植物を用いて実験を行った.このスクリーニング系を用いて,ITbMケミカルライブラリーの一部に対してケミカルスクリーニングを行い,接ぎ木を促進する5つの候補化合物を得た. また,ケミカルライブラリーだけでなく,種々の植物ホルモンが接ぎ木を促進または阻害する可能性を鑑み,in vitro grafting法で評価したところ,オーキシン類や一部のサイトカイニン類が接ぎ木を促進すること,ジャスモン酸やサリチル酸が接ぎ木を阻害することが明らかとなった. ケミカルスクリーニングに用いることを前提にした,寄生植物寄生部位を外部からのケミカルで処理をできる系の開発を行なった.根寄生植物Phelipanche aegyptiacaと,茎寄生植物アメリカネナシカズラCuscuta campestrisを用いてテストを行なった.寄生部位へのケミカルの与え方を検討したところ,アメリカネナシカズラの寄生部位外植片を用いる方法が最も有望であったため,アメリカネナシカズラ寄生部位外植片において寄生に必須なアメリカネナシカズラ吸器の伸長を再現できることが確かめられた.この試行の中でP. aegypticaとアメリカネナシカズラの吸器内通導組織の性状を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
in vitro grafting法に用いる植物材料の栽培に用いていた恒温室に不測の故障が生じたため,恒温室の環境制御システムの更新と環境設定調整に時間を要し,2018年度に完了予定であったケミカルスクリーニングに大幅な遅れが生じた.しかしながら,実験を2018年度に延長することにより,接ぎ木を促進する5つの候補化合物を得ることができた.一方,当初計画にはなかったが,ケミカルライブラリーだけでなく,種々の植物ホルモンの接ぎ木の促進または阻害効果を検証し,接ぎ木を促進する植物ホルモンと阻害する植物ホルモンを同定することに成功した. ケミカルスクリーニングに用いることを前提にした,寄生植物寄生部位を外部からのケミカルで処理をできる系の開発は順調に進み,この試行の中で寄生植物の吸器内通導組織の性状を明らかにすることもできた.
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今後の研究の推進方策 |
ケミカルスクリーニングに大幅な遅れが生じたが,接ぎ木を促進する5つの候補化合物を得ることができ,また接ぎ木を促進する植物ホルモンと阻害する植物ホルモンを同定することに成功したことから,当初計画した接ぎ木接合部の組織観察を,これら化合物を処理し,実施しているところである.当初計画より遅れが生じているが,今後の実験の加速により挽回可能なレベルである. 寄生部位の観察については,寄生部位を含む外植片をMS寒天培地上に静置して,培地から寄生部位へ添加薬品を浸透させつつ吸器の成長の違いを観察する系を確立でき,既に吸器内通導組織の性状を明らかにすることができている.今後,ケミカルスクリーニングで得た5つの候補化合物と接ぎ木を促進する植物ホルモンと阻害する植物ホルモンの処理を行い,詳細な寄生部位の組織観察を進める.
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