研究課題/領域番号 |
18H03954
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
浦木 康光 北海道大学, 農学研究院, 教授 (90193961)
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研究分担者 |
重冨 顕吾 北海道大学, 農学研究院, 講師 (20547202)
堤 祐司 九州大学, 農学研究院, 教授 (30236921)
玉井 裕 北海道大学, 農学研究院, 教授 (50281796)
吉永 新 京都大学, 農学研究科, 准教授 (60273489)
高部 圭司 京都大学, 農学研究科, 教授 (70183449)
綿岡 勲 京都工芸繊維大学, 繊維学系, 准教授 (70314276)
幸田 圭一 北海道大学, 農学研究院, 講師 (80322840)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 細胞壁模倣マトリックス / ヘミセルロース / 水晶発振子マイクロバランサ / 免疫標識 |
研究実績の概要 |
本年度は、まず、クラフトリグニンの分子量を光散乱検出器付きサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定を試みた。その結果、従来の分子量マーカーを用いるSECで求めた平均分子量より5倍程度大きな分子量であることが示された。この原因は、木材から単離したリグニンの枝分かれ構造に起因するとの仮説を立てた。この仮説を証明するために、8-O-4’結合のみからなるリグニンモデル高分子を調製し、その分子量測定を行った。その結果、リグニンモデル高分子は、分子量マーカーであるポリスチレン標品と同様な溶液挙動、即ち、SECにおける保持時間が同じときは、同一分子量を示すことが示された。よって、枝分かれ構造をもつと予想されるクラフトリグニンは、同じ保持時間(流体力学半径)でも分子量が大きくなり、原子が密に詰まった溶液構造を取ることが示唆された。 第2の検討項目として、消散監視機能付き水晶発振子マイクロバランサ(QCM-D)を用いて、セルロースとヘミセルロースの相互作用の検討を行った。セルロースが固定化されている市販のセンサーを用いて、測定を行うと、溶液平衡実験とは異なる結果が得られた。原子間力顕微鏡観察より、市販のセンサーでは、セルロースが均一に分布していないことが示された。よって、ヘミセルロースとの相互作用解析では、セルロースの未吸着部分との相互作用が測定に影響を与えていることが分かった。 第3の検討課題として、リグニンの5-5’結合を認識する抗体の作製を試みた。しかし、得られた抗体は抗原に対する力価が低く、新たな合成経路で抗原を作製する必要があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した抗原の合成ルートで作製した試料では、十分な認識力価を備えた抗体が発現できず、新たな合成計画を立てる必要があり、この点では、計画通りに研究が進捗しているとは言えない。しかし、他の検討課題では、問題点の洗い出しを含めて予定通りの進捗といえ、総合的には、おおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、5-5’結合を認識する抗体の作製を継続する。既に新しい合成計画により抗体の作製はほぼ終了しているので、残りは抗体の力価の評価である。また、QCM-Dを用いた細胞壁構成成分の相互作用解析においては、まず、セルロースがセンサー表面を均一に覆ったセンサーの調製を行う。これには、セルロースをセンサーに吸着させるための試薬(anchoring agent)を種々検討することと、セルロースの塗布方法についても検討を行う。 最後に、クラフトリグニンを始めとする単離リグニンの枝分かれ構造、特に、リグニン中の枝分かれ構造の頻度と、分子量との関係を光散乱およびX線小角散乱の測定法を用いて、検討する。
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